湊くんの秘密。




電話を切ると、部屋がシーンと無言になった。


誰もしゃべらない。




「…社長…っ」



結局、最初に口を開いたのは俺で。



社長の顔を見たら、ホッとして目頭が熱くなった。



「よく頑張ったな」

「ありがとうございます…っ。本当に…」



子機を握りしめたまま、社長に向かって深く頭を下げた。



レッスン、頑張ってよかった…。

蘭と会うなって言われたとき、一瞬だけ、は?って思ったけど。



慶太さんの言葉に従って本当によかった。


「これから忙しくなるぞ。頑張れよ」



にっこり笑った社長は、俺の肩をトンッと叩いた。



力強いその手が、俺に力をくれる。



主役、頑張ろう。

主役が俺の声じゃ不自然だ、なんて思われないように。



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