湊くんの秘密。



あたしが出れなかったときはあったけど、いつもあたしが折り返す感じで。



なんかあったのかな。



《聞いて、蘭》

「え、なに…悪い話…?」



急に湊くんの声が落ち着いたから、直感的に嫌な話なのかなって思っちゃう。



《んーん。違う。いい話》



電話越しに少し笑い声が聞こえてきた。



なんか湊くん、すごく嬉しそう。



《オーディションの結果、きたんだ》

「えっ」



今日だったんだ…。

あたしから『どうだった?』なんて言えなくて、湊くんの言葉を待つ。



ドキドキが…止まらない。


どうしよう、何であたしがこんなに緊張してるの。



《蘭、本当にありがとう》

「ん…」


あたしの中から、音が消えたみたいになった。



あたしの世界では湊くんの声しか聞こえてないみたいな、そんな感じ。



1秒1秒がスローモーションみたいに遅くて。


でも、これだけは。

湊くんの言葉だけははっきり聞こえた。



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