全ての想いはビードロの中に
  そして兄の亡き後しばらく僕は君の傍で、璃里と共に過ごした。


  でもって君の2歳になる娘璃里は、自分の父親の死を全く理解出来ない年齢だったから、父親にそっくりな僕の顔を見て『パパ』と無邪気に呼び、満面の笑みを僕に向けた。


  ちなみにその時僕は君に初めて会った日の事を思い出していた。と同時に長く閉ざされていた君への想いの封印を解いだ。


  そう。つまり僕は君の娘璃里をダシにまんまと君の気持ちを僕に向けさせる術(すべ)をその時見つけたのだ。が、しかしやがて璃里が成長して僕が本当の父親じゃないと知る日が来る事は確か。


  でもってその時の言い訳をどうしようかとひとしきりに考えあぐねて、思わずクスリと僕が笑うと、丁度その時キッチンで夕食の支度をしていた君が、料理の手を止めて幾分不思議そうな顔を僕に向けた。
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