全ての想いはビードロの中に
  やがて葬儀に関する全ての事が滞りなく済んで、僕の両親の心にもようやく普段通りの日常が戻ってきた頃、孫である璃里が兄と僕を間違がえたままで、明るく笑う姿を見てこのまま璃里が淋しがらないように、しばらく璃里の傍にいてやって欲しいと懇願された。が、しかしそれは僕にとっては好都合な事だった。だからその間僕は土・日・祝日及び残っていた有給休暇をフルに使い、割りと長い休暇を取ってそのまま真央里の家に滞在する事にした。ちなみに僕を本当の父親と信じて無邪気にまとわり付いてくる、璃里と君とのまったりとした日々は、兄の初七日を挟み穏やかに過ぎていった。


  そんな中君は僕と同じ顔の兄のどんなトコに、惹かれたんだろう?と言う素朴な疑問が生まれた。いや、むしろもしも兄と僕と君が同じ大学だったとして、果たして君はこの僕を選んでくれただろうか?と言う疑問の方が先に僕の心を占めた。


  ちなみに僕と兄は明らかに顔は瓜二つでも性格と言うか中身自体が全く違う。たとえば兄は成績が優秀だったから都内の有名大学に進み、どちらかと言うと勉強が苦手だった僕は受けた大学をことごとく落ち、唯一滑り止めとして受けて合格した地元の私立大学に、仕方なく進んだと言うように。と言うか、同じ双子でも頭のデキが違うせいか、両親は長男である兄をなにかと頼りにしていた気がする。
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