シークレット・ガーデン
 
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 窓の外、緑がけぶる庭園を見下ろし彼は背後に控えた家令に問う。

「―――どういう事だ?」

 いつも感情を見せない彼の声は確かに憤りを僅かに含み、気難しい主人の機嫌をこれ以上損ねぬよう、老人は注意しながら言葉を発した。

「は……本人が、庭師も亡くなり自分も十五になったことだから、こちらに世話になる理由もないと言い、今朝方早く、屋敷を去りました」

「……私は許可した覚えはない」

 ――いつも、この窓から見下ろせば、ところせましと緑の間を動き回っていたはずの、金の髪が見えない。
 そのことがこんなにも自分を苛立たせるものかと自嘲しながら彼は、視線だけ家令に向けた。

「――連れ戻せ」

 それは絶対の命令。
 一礼して部屋を出ていく老人には見向きもせず、窓に寄りかかる彼は、亜麻色の髪を揺らす少女の幻を眼下に探す。

 貴族らしく長く伸ばした金の髪が、何処か遠くをさ迷う翠の瞳を隠した。


「……アマーリア……」


 狂おしげに甘く、吐き出された声に、答えるものは――

 ない。


 
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