恋愛ターミナル
目を閉じて晃平さんの声を聞くと、なんだか余計に心拍音が増す。
言われるがままになった、その無防備な時間がとてもとても長く感じる。
緊張がMAXになったときに、目元にふわっとなにかがあてられた。
え……なに、これ。
目尻から目頭、涙袋も丁寧にふわふわとなぞられる。
も、もしかして――――。
「ふふっ、はい。元には戻せないけど、綺麗になったよ」
目を開けて、一番に飛び込んできたのは晃平さんの柔らかい笑顔。
それに見惚れそうになりながらも、我に返った私はパーティバッグから小さな鏡を取り出して目元を確認する。
「普段はもっとナチュラルメイクでしょ。ちょうどそんな感じになったんじゃない? オレはそっちの方がスキだな」
「―――すっ!!」
「スキ」って! いや、好きって、そういう意味じゃないよね。落ち着け私。
どう考えてもこの状況なら、慰めというか、気を遣われてる方の言葉でしょう。
飛び上るように姿勢を伸ばし、晃平さんを見た。そしたらやっぱり、そんな雰囲気じゃなさそうで。
冷静になってから、再び鏡の中の自分を見る。
ああ。やっぱすでに目が腫れぼったい……。明日休みでよかったぁ……。
そう心で安堵し、鏡をバッグに入れる際、ふと気になって携帯のホームボタンを押す。
「さ、3時?!」
時間を気にせず飲んでいたのは自分。
そして明日休みな私はどうでもいいとして。