恋愛ターミナル
「『でも、最後に凛々を貰うのはおれだから』……って」
本当にこれ、徹平の言葉? 自分でそのまま声に出しても全く想像つかないんだけど。
『貰う』ってなによ。私はモノじゃないし、またそういう言葉をチョイスするからこっちは期待しちゃうのよ?
私の話に、徹平は黙ったまま。
やっぱり、杉中さんの気の遣ったウソか。なんて思ってたら、徹平が今しがた置いたばかりのカバンを拾い上げ、なにやらごそごそと探り始めながら口を開いた。
「いや。凛々に報告がある」
「ほ、報告?」
「おれ、ちょびっと出世した。試験も合格したし、上の評価も良かったみたいだし。給料上がるのは夏からだけど」
「は……?」
「……それと、土曜の合コンはちょっと特別だったんだ」
はぁ?! 給料がどうとか、そんでいきなり合コンの話とか、全然とっちらかっててわけわかんないんだけど!
「『特別』? 付き合いの合コンに特別もなにもないじゃない」
「ん、いや。こんなネタばらし、かっこ悪ィんだけど。でも、今回は凛々を泣かせたから」
そう言って、「ん」と差し出された手のひら。
その上に乗ってる黒い立方体。白いリボンが可愛くラッピングされていた。
「――なに? これ」
そっと、それを両手で受け取る。
こんなサイズのこのカタチの箱なんて……。自惚れた想像するな、と自分に言い聞かせてるのに。
どうせこの期待と予想は外れるものだってわかってるのに。
だけど、どうしても、期待してしまう愚かな女。
「……どーしても、それを記念日に間に合わせたくて。予算よりかなり出てたんだけど、それ以外考えられなくてさ……。
そしたら先輩の知り合いがその店にいるっつーからさ。紹介してもらって……あの合コンはそのお礼みたいなモン」
「……開けてもいいの……?」
「そのために休み返上して頑張ったんだから、開けなきゃどーしてくれんだよ」