恋愛ターミナル

「玄関の真ん前よりはいーだろ」


なんでわざわざ廊下……?


そう疑問に思って口にしようとしても、いつの間にか胸の先端を口に含まれて、違う声が上がってしまう。
膝をついた彼の髪に両手を添えて、そこに口付けるように見悶えた。

そんな最中も、平岡さんは必要以上に言葉を発さない。

こんなこと、比べたりするものじゃないけど、歴代の男は大抵うるさいくらいに情事のときには愛を囁いてきていた。

――そのときくらい、上辺だけでも。

そんな感じで。


「ん、やっ……!」


静かな朝の自宅で響くのは、自分の卑猥な喘ぎ声だけ。

ジッ、と器用に私の白いサブリナパンツが脱がされると、太腿に直接あの手が触れる。
内腿を上へと辿るようにくちづけしていく平岡さんを、目を細めて見下ろす。

付け根まで到達すると、不意に彼が顔を上げて私を見つめてきた。
その視線だけで、体の中心から熱が込み上げる。

本気って、こんなに違うものなんだ。

自分の気持ちと体の変化に驚きながらも、彼の愛撫に身を捩る。


「ひ、らおか……さん……っ!」


言葉通り、一糸纏わぬ状態になった私は、まるで初めてのように顔を赤らめる。
私のその恥ずかしがる表情を見た平岡さんは、「ふ」と笑う。


「いいね、恥ずかしがる顔も」
「――あぁっ……」
「笑った顔と同じくらい、好きだ」


たまに口を開いたかと思えば、臆面もなくそんなことを言い出す。

私は照れてる暇も与えられず、また無口に戻った彼に片足を上げられる。



< 165 / 170 >

この作品をシェア

pagetop