恋愛ターミナル
『平岡さんなら』って思うけど、でもまだなんの確信もないし、そういう余計なプレッシャーも与えたくないし。
内心、『将来が見えないなら』って拒否されるかもしれないという不安で押しつぶされそう。
けど、至って冷静に見えるように、淡々と続ける。
「そんな女と、一番大事な時期に、一緒にいてもいいんですか……?」
結婚適齢期。たぶん、そんな括りに入っているであろう私たち。
今時期に出逢う人が、人生の中で最も重要なキーパーソンになるかもしれない。
ここでもしも、突き放されたのなら仕方がない。
そんな覚悟をしてテーブルに視線を落としたまま動かずにいると、なんとも呑気な声で、平岡さんは言う。
「気持ちが俺にあるんなら問題ないっしょ」
ずずっとコーヒーを啜ると、「あっちぃ」と顔をしかめた。
それからゴツイ手で頬づえをつくと、私をジロリと見る。
「それにしても……『汚い』は余計だろ」
「え」
ぼそりとそんな反論を受けて、ちょっと前に私が言った言葉だと気づくと、思わず笑ってしまった。
湯気が立ちのぼるコーヒーを前にしたまま、平岡さんは私を眺める。
そして、目を細めて彼は言う。
「まぁ、そんなんで梓の笑った顔見れんなら、『汚い作業服』っつーのも悪くないな」
その言葉に、私が心の中で思うこと。
『私も、平岡さんの笑顔なら毎日みたい』。
――そんなふうに思えた私の未来はどうなってるのかな。
きっとまた、想像できない私になってるんだろう。
――彼の笑顔の力で。
―TERMINAL3 END―