恋愛ターミナル
「でもさ。あんまり今までちゃんと見たことなかったけど、いずみの旦那さん、かっこいいね!」
凛々が高砂席で立っている新郎をまじまじと見つめて漏らす。
私はその言葉に、胸をキシキシと痛める。
――私、ちゃんと笑えてるかな。
そんな心配をするのは理由がある。
とっても簡単で、たぶん、理解してもらえるであろう“理由”が。
「亜美は大学一緒だから、旦那さんとも仲いいんでしょ?」
凛々がそんなことをいうと、また私はズキッと胸を刺される。
でも仕方ない。凛々も梓も、もちろんいずみも知らないことなんだから。
「うん。私がサークル誘われたのがきっかけだから」
そう。いずみと私は同じ大学で、そこの先輩だった新郎・裕貴(ゆうき)さんが私に「旅行サークル入んない?」って勧誘してきたのが始まり。
その誘いに私ひとりでは決められなくて、しっかり者のいずみを引っ張ってきて、二人で参加した。
結局『旅行サークル』と言う名の『飲みサークル』みたいなものだったけど、すごく楽しかった。
先輩だけど、そのサークルで顔を合わせる機会が多かったから、裕貴さんを好きになったのは結構すぐのこと。
でも、どちからというと社交的ではない私が裕貴さんに声を掛けるなんて出来なくて。
いつもいずみの後ろにいただけだった。
だから、すぐに気付いた。
裕貴さんがいずみのこと、好きだって。
そして、じょじょに縮まる二人を、すぐ後ろで見てきた。
なにも言わずに――言えずに。