恋愛ターミナル
「いえ……あの、おめでとう、ございます……」
「ありがとう! あ。そうそう! 亜美ちゃんちょっと助けてやってくれる?」
「え……?」
「助けてやって」って、なんだろう。
私が疑問の目をいずみに向けると、いずみもわからない、といった顔で応えてきた。
もう一度、裕貴さんを見ると、そこには恥ずかしそうな顔をして連れてこられた晃平(こうへい)さんがいた。
「いや! 裕貴、オレ、子供じゃないし!」
「つったって、浮いて見えたんだから、仕方ないだろ。亜美ちゃんとなら話も弾むだろ」
え……私となら話も弾む、とか、全然話が見えないんですけど。
状況が飲みこめない私が、困った視線を晃平さんに向けると、彼も『参ったな』という顔をしながら頭を掻いていた。
「裕くん、どういうこと? 亜美が全然わかってないよ?」
いずみが口を開くと、式の後だからなのか、テンションの高かった裕貴さんが少し冷静になって説明する。
「いや。なんか、晃平と親しいヤツがあんまいなくて。一人で酒飲んでたから、亜美ちゃんなら何度か会ってるしーと思って」
「ああ。なるほどね。そういうことだって、亜美」
「え」
いやいやいや。
確かに晃平さんとは、いずみと裕貴さんのデートに一緒したときとかにいて、何度もあったことはあるけど。
そこまで親しくはない……っていうか、ふたりきりで話とかしたことない気がするし。
なにより、今日の私はそこまで心の余裕がないんですけど……。
「いーじゃーん! コウヘイさんていうんですか? どーぞどーぞ!」
「……始まった。あんた、凛々に吐くまで付き合わされるよ」
「梓は人聞き悪いこと言わないのっ。めでたい席なんだからお酒が進むのはとーぜんでしょ?」
「はいはい。ま、この人もなかなか強そうな顔してるしね」
隣に座る凛々がなぜか乗り気。逆隣に座る梓もまんざらじゃなさそう……。
そんな二人の後押しで、晃平さんは申し訳なさそうに私たちのテーブルについた。