恋愛ターミナル


「いや、なんかすんません……」


今回の式のことも、晃平さんのことも、まだ受け入れられない。
そんな私と、遠慮がちのままの晃平さんを置いて、凛々と梓がどんどんと先を行く。


「全然っ。むしろ、女子だけってのもちょっと味気ないしね!」
「凛々、あんたは彼氏がいるだろーが」
「梓のくせに、そんなこと言うなんて」
「私は浮気はしない主義なの」
「不倫だって同罪だよーだ」


ああ……身内の恥を開始数分で晒してる……。

だめだ。こんな会話を聞かれ続けたら、私まで変なふうに見られちゃう! って、親友に対してちょっとひどい言い方かもしれないけど。

凛々と梓の止まらない会話をそのままにして、私は晃平さんの注意を自分にひかせようと、声を掛ける。


「あ……あの、お久しぶりです」
「あ、うん。最後に会ったのっていつだっけ?」
「確か、いずみたちに結婚の報告を受けたときだと思いますけど……」
「あーあー! じゃあ半年ぶりくらいなんだ」


晃平さんは、裕貴さんと同じ27で私のいっこ上。

大学が一緒で、サークルも本当は一緒だったんだけど、ほとんどバイトとかで欠席だった。
でも、裕貴さんと晃平さんが仲がいいみたいで、なんとなく存在は知っていた。

いずみと裕貴さんがつきあうようになってからも、たまにグループ交際的なノリで、4人で会ったりしていたのだ。

いや、正確にいえば、私と晃平さんはなにもないからグループ交際とは言わないのか。

とにかく、そんな感じでのつながりだから、晃平さんの連絡先はもちろん、晃平さんのこと、全然知らない。

今、なにをしてるのかーとか、家はどの辺、とか……言ってしまえば、どんな人かも実際語れるほどわからないわけで……。



< 5 / 170 >

この作品をシェア

pagetop