恋愛ターミナル
「実はオレ、二次会からの参加だから、余計にノリが合わなくて」
「あ、そうなんですか? お仕事ですか?」
「うん。こういう結婚式とかってほとんど休日でしょ? オレ、そういう日こそ忙しいから」
「へぇ。ちなみになにをしてるんですか?」
「メシ作ってるよ。イタリアンの店」
そうなんだ! 全然知らなかったなぁ。コックさんかぁ。
ああ、そう言われて晃平さんを見てみたら、白いコックコートにあのロング丈のソムリエエプロンが似合う。
爽やかな笑顔のコックさん……モテそうだなぁ。
「亜美ちゃんは、事務だっけ。どの辺の会社なの?」
「えぇと、駅前の西口からすぐ――」
あれ? 私、事務員だって話したことあったっけ?
だって、きっとそんな話してたら、晃平さんの仕事の話だって聞いてたはずだよね。
あ、いずみから聞いたのかな。
「あ。そうなんだ! じゃあオレの店と近いんだ」
「え。そうなんですか?」
「タワーのレストラン街に入ってるから」
少し話が盛り上がって来たところに、ウエイターがグラスをふたつ持って近づいて来た。
話を中断して、手元のグラスを見ると、出だしに貰ったビールがなみなみと残ったまま。
晃平さんのグラスも、まだ半分は残っていた。
「お待たせしました」と声を掛けたのは、隣に座る凛々と梓に、だ。
二人と目を合わせると、意味不明に目を輝かせて小さくガッツポーズをしている凛々。そして、静かに意味ありげに笑う梓。
え。もしかして、もしかすると、この二人、晃平さんと私がどーにかなるとか思ってるんじゃ……?
ないない、ナシでしょ! だって、そうなるならとっくにどうにかなってるだろうし、何より――……裕貴さんの友達だし……。
「じゃ、今度、店おいでよ。サービスする」
俯いてた私に、優しい晃平さんの声がして顔を上げた。
にっこりと笑う晃平さんが、なんだかとっても癒してくれた気がして、私もつられてほほ笑んだ。