恋愛ターミナル
「急にごめんねっ」
「いつものことだし」
「へへ。まぁね。ランチ奢るからさ! 今日つきあってよー」
待ち合わせ場所に5分前に着いた私よりも先に到着していた梓。
梓はそういうところがきっちりとしていて、約束事は絶対に破らない。
「いいけど、私、8時に別の約束あるから。それまでね」
「ちぇ。ここにも彼氏持ちが」
「『ここにも』?」
私はいつものショップの方向に歩き始めながら、後ろをついてくる梓に口を尖らせながら説明する。
「亜美よ、亜美! くっついたんだってさ!」
「亜美? へーえ。あの二次会の彼?」
「まさかこんなに早くそうなるなんて思わなかった」
そうよ。だってなに?1週間ちょっと経ったくらいなのに、もう?
そんなペースで行かれたら、結婚だって、絶対亜美の方が先でしょ!
「それでそんなに荒れてるの? 凛々は」
「別に! 亜美は理由じゃないのよ、亜美は!」
「……となると、あいつか」
「あいつ」。
高校の同級生の「あいつ」は、もちろん梓とも同級生なわけで。
だから、梓たちに愚痴るのが一番すっきりする。徹平のことを知ってるだけに、「うんうん」と頷いてくれたりするからね。
「またケンカ?」
「……ケンカにもならないっ。最後に一緒にどっかいったのだって、いつのこと? って感じだしっ」
「まぁお互いに社会人だとね。時間はなかなか取りづらくはなるよ。それでも凛々は同棲してる分だけ恵まれてるじゃない」
ネイルを気にしてる梓に、なんの手入れもしていない爪の私の手で、梓をさして言った。
「それが問題なの! 一緒に住んでるのに、最近は交わす言葉も少ないんだから!」
別にお互い夜勤がある仕事じゃない。
それでも朝は私が早いし、帰りは残業しても、徹平の方がうんと遅い。
だからせめて、二人の休みが一緒のときくらい――って思うんだけど、あいつが休日出勤とか、友達とどこかにいく約束してたとか。
朝ご飯はあいつほとんど食べないし、夜も遅いから外で済ませてまた仕事してるらしいし。
食事の時間すらも、そんな感じで共有しないとなると、本格的にやばくない?
「――だめだ。梓。まずなんか食べよう」
ピタリと足を止めて私は言った。
梓は腕時計を見て、「ちょうどお昼だしね」と答えたから、なんの問題もなく方向転換をした。