恋愛ターミナル


昨日同様、休日ってほんと人で溢れてるなぁ。
進行方向を見ずに、きょろきょろと辺りを見ながら歩き、気付いたら横にいたはずの徹平がいない。


「あれっ? 徹平……」


慌てた私は、徹平が今日着ていたグレーのパーカーの人を探す。
すると、前方で一人だけ立ち止まってこちらを向いている徹平を見つけた。


「ご、ごめっ」


駆け寄る私を、呆れた目で見て、また先を歩きはじめる。


な、なによ。ちょっとだけよそ見してただけじゃない。
それなのに、あんな溜め息でそうな目で見なくても。

大体こんな人が多いんだし、ちょっとでも油断したら見失いそうなんだから、手くらい繋いでくれてもいいのに。


手を伸ばせば届く距離を歩く徹平。
歩いて揺れる手を見つめる。その手は、ほんと、すぐ目の前にあるのに。
照れなのか、意地なのか。
付き合い初めから数年はどちらからともなく繋いでたのに。


なんでかな。
不思議だけど、時を重ねる毎に近くなってるはずが、たまに遠く感じちゃう。


手を繋いだのも、キスしたのも、求められたのも……いつだっけ?


「おう! 徹平じゃね?!」


急に止まった体に追突しそうになって、前のめって私も足を止める。
正面から歩いてきた人が、どうやら知り合いのようだ。

徹平よりも体格がよくて、ちょっと背が低いアメカジ服の男の人。



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