恋愛ターミナル


「……まだ飲む!」


二次会会場を出た私は、いつの間にか、完全な酔っ払い。
足はふわふわと――いや、ふらふらとしてるけど、具合は悪くないし、こんな日くらい、飲まないとやってられない。


「ええ? もう止めた方が……」


心配そうに顔を覗き込むのは晃平さんだ。


「大丈夫ですっ。ほら、凛々、梓……あれ?」


後ろを振り返ると誰もいない。

――薄情な! こんな私を放っておいて、二人して帰ったわね!

二人においてけぼりにされたと分かった私は、くるりとまた前を向く。そして気付けば、晃平さんに体を支えて貰って立っていた。


「二人は『終電に乗りたいから』ってすぐに帰っちゃったんだ。亜美ちゃんはタクシーで……」
「晃平さん。飲みましょう」
「えっ」
「私が奢りますから!」


とにかく飲みたい気持ちと、一人になりたくない想いと。
凛々や梓が一緒なら、ここまでお酒で開放的にならなかったかもしれない。


近しい親友だからこそ、言えないことや出せない感情がある。

少し遠い存在だからこそ、吐き出してしまいたいと思ってしまう。


そんな気持ちとお酒で大きくなった心が、普段なら絶対に出来ないであろう“晃平さんを誘う”なんてことが出来た。



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