お嬢様の事情その1
あれから綾美とは随分と気まずくなってしまって大分学校でも話さなくなった。
取りあえず優がいつもの明るさを取り戻し、3人で水着を買いに行こうと言う話になった。
そして今日がその日。
私は待ち合わせ場所で車を降りた。
そこは大手百貨店の立派な石像の前だった。
しばらくすると優が車から降りて走ってくるのが見えた。
『遅れたかなぁ。』
若干息を切らして優がそういった。
今日の優の格好はタイトスカートに絹のシャツ、色合いはスカートが黒でシャツは生成だ。ベルトがおしゃれで赤い細ベルトをゆるく腰に巻きつけていた。靴は黒いパンプス。染めた茶髪を緩く巻いている。
まるでどこかの会社のOLのようだ。
優は私の使用人が調べたところによると日本の最大規模を誇る服飾系の大会社の社長令嬢だ。
優も大会社の社長令嬢、静香も華族の生まれ。やはりこの学校本当にお金のある人しかないんだと思った。
それにしても今もこのお金持ちの感覚に慣れない。
いくつもの世界の大会社を束ねるコーポレーションの会長である祖父の跡継ぎとしてこの家に来てから3年。
それらしく振る舞ってはいるもののまだまだ追いつかない部分も多いものだ。
今日もまたその部分が垣間見えるかもしれない。
『林檎!優!お待たせ。』
静香は相変わらず上品で清楚なお洋服で私たちの前に現れた。
白いレースやフリルのあしらわれたブラウス淡いブルーのチュールスカート。キャラメル色のウェーブの髪を今日はハーフアップにしてカチューシャつけていた。それなりに洋服の質も良くてとてもおしゃれだった。
3人で歩き出して私が一番初めに目に止まったのはチープな雑貨屋さんだった。
この2人にそこが見たいなんて言えるはずもなくて何となく素通りして終わった。
私は特に行く場所を考えていなかったから2人の会話を聞いているだけだった。
2人は生粋のお嬢様。
生まれた時からずっとずっと生活が変わったことはない。
『あの店とても素敵だわ?』
『いいわね。』
静香が指差したお店は一流ブランドの店だった。
門構えからして高級そう。
ちょっと前のあたしだったら逃げ帰っていたかもしれない。
今の私はそ知らぬ顔して門をくぐった。
『今年の夏のモデルの水着を買いたいのだけど』
そう定員に優が言うと店員がいくつかの水着を在庫から出してきた。
1つはボーダーのマリン系。
1つは黒のホルターネック。
どの水着も派手すぎず地味すぎずどれも上品なものだった。
『この店、実は私の行きつけなの。』
『そうだったの。名前だけなら知ってたわ。品物も良いって噂ね。』
静香もこの店を知っているらしい。
店のビジュアルは清潔感があって広くなんだかとても高級感が漂っていた。それはそうかもしれない。だって高級ブランドなんだもの。
『このブルーノ水着が素敵ね』
私はそう言って会話に参入した。
3人ともお目当ての次男見つけて試着することに。
優お勧めのその店で3人とも買ってお互いにデザインだけは知っていた。
まさか着た所を試着室から出てきて見せ合うなんてできっこなかったから。
そうして結局水着用買って体育の授業に臨むことになった。
綾美との中は戻ることがなく・・・。