お嬢様の事情その1
『ごきげんよう』
爽やかな挨拶とサンサンとヒノヒカリを浴びたヨーロッパ建築の学校がとても美しい。
レンガタイルの桜並木をまた一歩一歩歩いて行く。
再び大理石の階段が現れ、玄関に入る。
正面には広い昼間があって、両脇に各生徒のロッカーがある。
私はそのロッカーを開ける。
いつものことながら立派な彫刻の入った全身鏡が現れた。
入学してからもう半年以上経った。
今は冬。
皮のブーツをしまい、コートをかける。
ロッカーに鍵を掛け、廊下を行く。
広い廊下にはヨーロッパ建築の柱が何本も建っている。
エレベーターに乗り教室へ向かう。
教室の手前の収納庫があり、そこが教科書や勉強道具の収納場所だ。
今日の分の勉強道具を用意し、教室に入る。
『笠原さん。ごきげんよう。』
クラスメイトが挨拶してくる。
『ごきげんよう』
そんな朝の挨拶をさておき凄い勢いで近づく人がいた。
『ちょっと!今お時間よろしくて?』
優だ。
『優。どうしたの!』
驚く私に優は苛立ちと呆れと色々な感情がまざった顔をした。
『ちょっと来て下さらない?』
私はその剣幕に負けてとにかく優の赴くままについて行った。