お嬢様の事情その1
入学の秘密
何故、私が聖マリア女学院に入ったか。
それは三年前に遡る。
私の祖母が亡くなったのだ。
祖母は優しい穏やかな人だった。
祖母の葬儀には多くの人が参列し、皆で涙を流した。
祖母は離婚しており、私の母を一人で育てた。母が結婚しても祖父は連絡を取ることも無かった。
ところが祖母がなくなり、葬儀が終わった三日後、使いの使用人が現れた。
そのとき、母と父は顔を見合わせた。
母は幼かったため祖父の顔を覚えておらず、幼いながらに父の顔を見たいと思っていたらしい。
使用人の案内通り母は祖父と会うため私と父と共に祖父の家を尋ねた。
祖父の家は某所にあり、数十メートルの塀囲いの屋敷だった。
門には迎えの車があり、屋敷の入り口まで十分程車に乗った。
重厚な玄関の扉を開けると使用人が客間へと導き、お茶を出された。
庭は薔薇園のように薔薇が咲き乱れ、客間は見事な絨毯や家具が置かれていた。
母は祖父と会い、念願の想いを晴らした。
祖父が『ずっと会いたかった。』と言っていたのが強く印象的だった。