ちっこいラブやもしれんけど。(12/22完全完結☆)







先頭打者、佐藤くんがヒットを打ち……、



バッターは、9番の石川くん。




みんな、祈るようにして………


バッターボックスを見つめる。




ちらりと横を見れば。



初回から変わらぬ声の大きさで……、由良が叫んでいる。





眉が上がって……


必死や。





「……かっこいいな。」



そんな、ちっちゃな声は……届かない。







初球……、



ボール球に、石川くんのバットが触れる。






ぼてぼてのピッチャーゴロ。



セカンドにボールが飛び、ランナー…アウト。




間髪おかずに送球されたボールは、しっかりとファーストのグローブにおさめられて……




バッター、



………アウト。










「おわった……」

「もう駄目やろ」



そんな声が、スタンドからちらちらと聞こえてくると……、



「ぴりっとせぇや!まだ終っとらんやろ!」



由良が……叱責の声を上げる。






場内にはアナウンスが流れ、バッターは、3年生の…代打、藤浪くん。




今大会初打席の彼の登場に……


周りは、落胆の色を隠せない。




「…藤浪先輩はここぞって時にやる人や。諦めんのは…早いで。」



「藤浪……。ハッ!阪神……、甲子園のヒーローやん!」



「そやで、日向!藤浪ナメたらアカン。」



由良は、メガホンを口にあてて…


その先を、わたしの耳へとよこした。



まるで、二人きりのナイショ話みたいにして、



こう……囁く。





「諦めないで、まだ。試合も…、ラブも。奇跡は……、ある。」



「…………!」


な……なんちゅ~ことを……!!!




奴の言葉に、体の左側が、かあ~っと熱くなった。




「……ちゅーワケで…、藤浪さん応援歌~ッ、LOVE2000!!!」







わああっと生徒達の最後の歓声が…上がる。



突き上げるような……太鼓の音と、


空に響き渡る…ラッパの音。






藤浪コールに……、




由良の、枯れた声。







その全てがひとつになって。





グラウンドに……



旋風を起こしていく。






< 126 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop