ちっこいラブやもしれんけど。(12/22完全完結☆)
先頭打者、佐藤くんがヒットを打ち……、
バッターは、9番の石川くん。
みんな、祈るようにして………
バッターボックスを見つめる。
ちらりと横を見れば。
初回から変わらぬ声の大きさで……、由良が叫んでいる。
眉が上がって……
必死や。
「……かっこいいな。」
そんな、ちっちゃな声は……届かない。
初球……、
ボール球に、石川くんのバットが触れる。
ぼてぼてのピッチャーゴロ。
セカンドにボールが飛び、ランナー…アウト。
間髪おかずに送球されたボールは、しっかりとファーストのグローブにおさめられて……
バッター、
………アウト。
「おわった……」
「もう駄目やろ」
そんな声が、スタンドからちらちらと聞こえてくると……、
「ぴりっとせぇや!まだ終っとらんやろ!」
由良が……叱責の声を上げる。
場内にはアナウンスが流れ、バッターは、3年生の…代打、藤浪くん。
今大会初打席の彼の登場に……
周りは、落胆の色を隠せない。
「…藤浪先輩はここぞって時にやる人や。諦めんのは…早いで。」
「藤浪……。ハッ!阪神……、甲子園のヒーローやん!」
「そやで、日向!藤浪ナメたらアカン。」
由良は、メガホンを口にあてて…
その先を、わたしの耳へとよこした。
まるで、二人きりのナイショ話みたいにして、
こう……囁く。
「諦めないで、まだ。試合も…、ラブも。奇跡は……、ある。」
「…………!」
な……なんちゅ~ことを……!!!
奴の言葉に、体の左側が、かあ~っと熱くなった。
「……ちゅーワケで…、藤浪さん応援歌~ッ、LOVE2000!!!」
わああっと生徒達の最後の歓声が…上がる。
突き上げるような……太鼓の音と、
空に響き渡る…ラッパの音。
藤浪コールに……、
由良の、枯れた声。
その全てがひとつになって。
グラウンドに……
旋風を起こしていく。