ココロクスリ

真由さんから聞いていた大阪での仕事は
―宝石の展示会販売員―

よくTVなんかでやってるデート商法ギリギリの仕事だった。

天王寺で降りて言われた場所まで行くと背の高いグッチのスーツで身体を固めたホストみたいな人と真由さんが居た。

「ちぃ!!こっちやで」
笑いながら手を振る真由さんに手を振り返しながら小走りで向かった。


ホストみたいな人は私が働く[vivid]という会社の社長さんだと紹介された。

「初めまして。代表の小山健です。」

見た目かなりいかつめな社長は笑うと目が細くなり可愛い顔になった。


簡単に自分の紹介もして会社に行く事になった。

「今日は顔合わせだけで歓迎会もするから寮に荷物置いてくる?」

と、社長が聞くので私は、はいと答え先に寮に向かった。

寮は市内にあり田舎育ちの私はあまりの都会さに引いてるとそれに気づいた社長が笑いながら、

「すぐに慣れるよ」

と、フォローしてくれた。

寮は綺麗な10階建てのオートロックマンションで2LDKの部屋に真由さんと一緒に住むことになっていた。

家賃は10万を2人で折半するんだけど最初の3ヶ月は会社の給料が売上によるから仕事に慣れるまで社長が支払ってくれるという。

部屋に上がるとオシャレなつくりでリビングは12帖ありキッチンは赤を基調としたシステムキッチン、部屋は6帖のフローリング。

家具も揃えられていて可愛いベッドや液晶TV、MDデッキ、DVDプレーヤーなんかもあった。

「こんなに揃えてもらっていいんですか?ありがとうございます!!」

素直に社長に告げると社長は、

「仕事頑張ってくれたらそれでいいよ。」

と言ってくれた。

今、考えればすぐに気付くだろうがこんなに立派な住む所を用意してくれて給料も聞けば基本給が14万に売上の+αがつく。

そんな職場なのにわざわざ私みたいな田舎の子を呼ばなくても人は来るだろう。
なのに、人手不足なのは仕事がキツいからなのに。

うまい話なんかあるわけないのに。

15歳の私は気付くわけもなく滑稽な程に蟻地獄へ引きずり落とされていく。

< 35 / 102 >

この作品をシェア

pagetop