ココロクスリ
『お邪魔します』
静かに言う彼女には笑顔がなかった。
当たり前だ。
きっと彼女は気付いてる。
これから何を話すかを―…。
それが何を意味するかを―…。
『ミィ…。嘘をついてチィを困らせないでくれない?』
『―…。だって』
下唇を噛み締め涙を溜めるミィちゃんを見るのは同じ女として見るに耐えない姿だった。
「私はヒデさんが好きだからミィちゃんの気持ち痛いくらい分かるよ?けど…ヒデさんは譲れへん。」
『―…。』
沈黙でしか守る事の出来ない彼女の気持ちが痛かった。
『ミィ?もぅ気付いてるやろ?諦めて欲しい。答える事出来んかったし俺も曖昧な態度とったかも知れない。だから今ハッキリさせたいんだ。ミィには恋愛感情がない。だから―』
『もう…もう分かったから。』
それ以上は誰も何も言わなかった。
ミィちゃんが帰ってから私達は約束した。
―嘘はつかない―
―ずっと側にいる―
そんなありきたりな約束をして私達は笑いあった。
ねぇ。ヒデ。
私はね、ヒデが居たからまた笑えたんだよ?
寒がりなヒデを今は誰かが温めてくれてる?
寂しがりやなヒデ。神様が居るならどうかあの人を苦しめないで。
笑っていてね。