マイナス×マイナス
第1章
はるかは今日もベッドの中にいた。
ずっと大切にしてきたぬいぐるみのくまたんに話しかける。
「くまたんになら、素直にすべてを話せるの。
不思議だね。
ねぇ、くまたん。
また、サッカーしたいな。
大学生になったら、またできるかな。」
高校3年の冬を迎えていた。
「くまたんは、昔のわたしと今のわたし、どっちが好きかな?
こんなわたしじゃ、だめだよね。」
わたしは、膝の痛みに4年ほど悩まされている。
サッカーもできなくなった。
ひどいときには、日常生活にも支障が出た。
膝の怪我は、はるかからサッカーだけでなく、
多くのものを奪っていった。
笑顔、友達。はるかはそれさえも失った。