恋する吹奏楽部

♬ G

「お兄ちゃん可愛すぎ。」
「どうしたの千夏。」
「だって、お兄ちゃんすっごく可愛くない!?」
私、一年生のチューバ、鶴巻ゆり(つるまき ゆり)。
最近、もうひとりのチューバの河原千夏(かわはら ちなつ)がおかしい。
千夏には三年生のお兄ちゃんがいる。吹奏楽部に。
河原千穂(かわはら ちほ)先輩だ。男の先輩だよ?
河原先輩のパートはトランペット。
「可愛いっていったって、河原先輩は男だよ?」
「しってますー。」
「じゃあ、なんで?」
「お兄ちゃんがね、某つぶやきサイトでつぶやいてるの見たんだけどね」
「うん。」
「ありがとうさぎー!って!!!!可愛いいいいい!!!!!」
「ははは・・・」
確かに、河原先輩はおっとりしてて、ふわふわした感じの先輩だ。
一人称も俺とか使わないし、「ちほはね、」みたいな感じで可愛い。
つぶやきも可愛いけどさぁ・・・。
先輩だし、男の人だし・・・。
なにより三年生だし・・・。
私には結構程遠い存在。
パートだって違うしね。
目の前を涙目の宗次さんが通ったけど、私たちは構わず会話を続ける。
「まぁ、ゆりもお兄ちゃんとお話してみてよ。私が紹介するからさ!」
「う、うん。でも先輩修学旅行中でしょ?」
「帰ってきてからに決まってるでしょ!今度家においでよ!」
「うん、いいよ。」
「これでゆりもお兄ちゃんの可愛さがわかるはず!あ、ほかにはね・・・」
千夏が先輩の可愛いとこを語り始める。
でも私は千夏の方を見てはいなかった。
「ゆり~。また河音ぇ?」
「え、あ、あ、うん。」
私は絶賛河音君に片思い中。
それでも
河音君は田口さんの事が好きで、田口さんは河名木先輩が好きで、河名木先輩は田口さんの事が好き。
私入ったらもっとややこしくなっちゃうよねぇ。
私が思うに、河原先輩より、河音君の方が可愛い!
ちょっとツリ目だけど、微妙にアヒル口で、色白で、くせっ毛だし、すっごく痩せてるし、
可愛い可愛い可愛い可愛い。
こんな私をしってるのは千夏だけ。
「河音のどこがいいのよ。」
「!!河音君はね、ツリ目のアヒル口で色真っ白だし、あのくせっ毛可愛すぎだし!!目もくりくりしてるし!!私より細いし!声もちょっと高めなのがすっごく可愛いしあとあと、それから・・・・!」
その時。
「ちょ、ゆり・・・。」
「ふえ、」
「・・・・あ、あはは。」
私たちの目の前に河音君が現れた。
な、涙目!!!?
可愛い、可愛いよ河音君!!!!
じゃなくて・・・・。
「やっほ河音。今の聞いてたの?w」
「え、え、え。」
「ゆりのだよ。」
「え、あ、まぁ。」
え、ちょっとまってよ。
私の前で私の話をする河音君と千夏。
なにこれ。
こんな展開聞いてない!!!!
「あ、鶴巻・・・?だったっけ?」
「は、はい」
「そ、そっか。じゃ、じゃあな・・・。」
「ふぇ?か、河音君・・・?」
河音君が私の前から消えていった。
「残念だね、初めて河音と会話できたと思ったら引かれまくったなwww」
「ち、ちなつぅ・・・。」
「え、なんで号泣。」
「河音君に嫌われたよおおおおおおおおおおおお」
「泣くな、泣くな。可愛い顔が台無しだぞ。」
「ふぇ~~~~~ん・・・・。」
「ま、とにかく河音も宗次ちゃんも涙目だったのがひっかかるけど。まいっか。」
涙目とかいってる場合じゃないよね、私号泣なんだけど、
どうにかしてよおおおおおおおおおおおお。
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