恋する吹奏楽部
フェスティーボ

「聖良?」
「え、」
「爆睡してたけど大丈夫?」
「ま、まぁ」
嫌な夢。
俺が一年生のころだ。
「聖良。」
俺の前に立つふゆ。
怪訝そうな顔。
「なに」
「やまと先輩の夢だったの?」
「・・・・・・・・まぁ、そうだけど。」
「まだ諦めてないの?」
「・・・。」
夕璃や一年生みたいな恋がしたかった。
別に夕璃みたいな辛いのはいやだけど。
実をいうとね、
やまと先輩は、
ここには、、、
いないんだ、、、、、、。

引っ越した・・・とかならいいんだけど。


この世にもういないんだ。


やまと先輩が姿を消してから俺はグレてグレまくった。
今の2年生や、同学年の子にはめちゃくちゃ迷惑かけたと思う。
好きな人が死んで、それはそれは悲しかったんだ。
先輩に告白したあとだった。
先輩が答えを出してくれなかったから、一緒に帰ったんだ。

「やまと先輩・・・。」
「ん・・・?」
「あの・・・。」
「答え・・・だよね・・・。」
「フるならフってくださいね!いつまでも引きずりたくはないですよ!」
「いや、そうじゃなくて、大翔ちゃん!」
先輩が振り返った瞬間、
先輩が急に俺に抱きついてきたそして、突き放した。
(あ、フられたんだ。)
のかと思ったら、




目の前を大型トラックが通り過ぎた。










「             」

声にならない悲鳴だったと思う。
気がついたらノドがかれて、声が出なかった。


やまと先輩が死んだ。






俺の代わりに







死んだ。








「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。」





トラックはやまと先輩を轢き裂いた。
死体という塊はなく、ただの肉片が散らばっていた。


お通夜の夜。
先輩の家には大勢の吹奏楽部員が集まった。
もちろん、俺たち打楽器も。

俺はなにかブツブツ唱えていたらしく、近くで当時の打楽器の先輩たちや、夕璃たちが私を見守っててくれたみたい。
覚えてないけど。

やまと先輩が死んで、2年。




「ふゆ。」
「ん?」
「お墓参り行ってくるね。」
「いってらっしゃい。後から行くから。」
「うん。」

後から聞いた話、先輩も俺のことがすきでいてくれてたらしいの。

これで両思いなんだね。
先輩は俺の彼氏なんだよ。

今日は先輩の命日。
俺は今年も先輩に会いにいく。
来年も再来年も。


婚約者と結婚しても。

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