恋する吹奏楽部
部活
「ゆりー」
「千夏。何?」
「隣で吹いていい?」
「いいよ。」
千夏が私の隣に来た。
今日のチューバパートの活動内容は渡り廊下で個人練習のあと、修学旅行から帰ってきた3年生の先輩にたなばたを聞いてもらう。
アドバイスとかもらって練習するのが活動内容。
私は未だにあのショックから立ち直れていない。
河音くん・・・。
「あのね、ゆり。いい知らせよ♪」
「ん?」
「昨日のことなんだけどさ」
昨日 河原宅
「ぽわわわわわ」
「お兄ちゃんどうしたの」
「むむむ、チューバの一年の長い髪の女の子なんていうの?」
「私といつも吹いてる子?」
「ふむ。」
「あの子の名前は鶴巻ゆり!可愛いでしょー!」
「うん、可愛い」
「みょ!?」
「ん?」
「ゆりのこと可愛いって思ってんの?」
「うむ。」
「ほぇー。」
「ゆりちゃんかぁ・・・。ブツブツ」
「お兄ちゃん明日久しぶりの部活だよ」
「わかってますー」
・・・・・・
「昨日こーーんなことがあってさー!」
「へぇー。で?」
「ゆり冷たい!!お兄ちゃんがゆりの事可愛いって言ってたんだよ!嬉しくないの?」
「先輩だからそりゃ嬉しいけど、」
河音君じゃないし・・・。
その時
「・・・こんにちはっ!」
「こんにちはー」
「こんちくわあああ」
私たちの前をトランペットの三年生が通る。
もちろん河原先輩も。
「あ、ゆりちーん!」
河原先輩が私に笑顔で手を振る。
「こんにちはっ」
チューバを持っているので小さく頭を下げるくらいしかできなかった。
「こらっ、一年生にナンパしないっ!」
「えええ、してないよおおお」
「鶴巻さんだっけ、ごめんねー^^」
「い、いえ!!」
トランペットのパートリーダーの栗花落奈緒(つゆり なお)先輩。
部活内でのおしゃれ番長。
読者モデル、スカウトなどの経験があり、打楽器の島津先輩とトップをあらそうスタイルのよさ。
「千穂やんっ♥」
でもって向こう側からやってきたのは三年生アルトサックスの姉崎りりい(あねざき)先輩。
「こんにちはっ」
「こんにちはー」
「ちわっす!千穂やーん一緒に練習せえへん?」
「りりー、あんた木管でしょ。練習なら木管集めてやりなさいよ。」
「いややぁ、千穂やんと練習したいしー」
姉崎先輩は河原先輩の幼馴染。
河原先輩大好き。
三年にしてはすこし低めの身長。
前髪はパッツンで、高い位置でツインテールにしている。
河原先輩をしょっちゅう練習にさそうが、パートリーダーの栗花落先輩に毎度追い返されてる。お茶目な先輩。
「りりー、やっぱりここにいた。」
三年アルトサックスのもうひとりの先輩、名雪真白(なゆき ましろ)先輩。
「「こんにちは」」
「こんにちは。」
名雪先輩は姉崎先輩と対照的で大人しくて、河原先輩がきらい。
「りりー、これから木管だけで合奏だから。早く一音いくよ。」
「ええええ。うっそおおん。」
「お願いだから、後輩と私とラッパの皆さんに迷惑かけないでよ。」
「ぶーぶー!ばいばーい千穂やん。今日も一緒にかえろうなー!」
「はいはああい」
私と千夏の前から姉崎先輩と名雪先輩がいなくなった。
「ゆりちん、今日ウチ来ない?」
「ほぇ?」
「待ってるよ。」
河原先輩が私にだけ聞こえる声量で言った。
「は、はい.....。」
なんだろう、この変な感じ。
結局曲練に集中できなかった。