恋する吹奏楽部
第一音楽室前
「なゆぅー」
「何。」
「木管合奏ないんやけどー?」
「そうよ、ないわよ。」
「わああ、なゆが意地悪したあああああ」
「はぁ、してないわよ。」
私の名前は姉崎りりい。
ちっちゃい頃から変な名前がコンプレックスやった。
でも、私の名前かわいいって言ってくれたんは幼馴染の千穂やん。
だから千穂やんが大好き!!
でも吹奏楽に入って知り合った、なゆこと名雪真白は千穂やんのこときらいやて。なんでやろな。なゆはキッチリしてるからなよなよした男子は嫌いなんかな?
三年間ずっと聞いてない。
一回喧嘩したことあって、「この年にもなって!」って怒鳴られてツインテをほどかれたことがあってん。この髪型は千穂やんが気に入ってるから幼稚園のころから変わってない。私もヘラヘラしてるからよく先輩にもなゆにも怒られとった。
「合奏ないんやったら千穂やんとこいくわ。」
私がなゆの隣を通り過ぎようとすると、なゆが私の肩を掴んで壁に押し付けた。
「ったぁ。。。なゆ?やめてぇや。。。」
「まだツインテール・・・。」
「え?」
なゆがボソっと呟いてツインテールの毛先をつまんだ。
「あいつはこの髪型が好きなのね。」
「なゆ?」
「私とお揃いにすればいいのに。」
なゆの綺麗に切り揃えられた長い黒髪が風で揺れた。
なゆが私の両方のツインテをほどいた。
「この方が綺麗なのに。」
なゆがちょっとキレてる。
「な、なゆ?」
「こっちのりりーの方が綺麗。まぁ、どっちも好きだけど。」
なゆがとろんとした目で見てくる。
「もうすぐ夏休みね。」
「え?」
「夏も河原も大嫌いよ。夏休みとりりーは大好きなんだけどね。」
私のファーストキスはなゆだった。
なゆのファーストキスは私だった。
部活終了後
「千穂やん、ごめん、今日一緒に帰れへん。」
「りりー、おっけ、わかった。」
りりーが一緒に帰れなくなった。
僕は千穂。河原千穂。
妹の千夏はこれから直接塾だし、お母さんもお父さんもいないし、ゆりちんと一緒に帰るか。
ゆりちんどうせウチくるしね。
勝手に誘っちゃったけど大丈夫かなぁ。
岡重先生や、後輩のみんなにばいばいしたあと、門をでようとすると。
「河原先輩。」
「あ、ゆりちん。ここにいた!」
「あ、あの、私本当に先輩のお家にお邪魔してもいいんでしょうか。」
「んー?千夏の家に遊びに行くような感じでいいんじゃない?実際千夏のいえでもあるし。」
「は、はあ・・・。」
「じゃ、いこっか。」
「はい。」
かなり緊張しているように見えるゆりちん。
可愛いな。
千夏がよくうちに招いていてしかも同じ部活だからよく見かけてたんだけど、最近ますます可愛さが増したように感じる。
「ゆりちん。」
「は、はいっ!?」
「好きな人いる?」
「ええっ!?え、えっと・・・。」
ゆりちんがもじもじする。
もどかしいけど、すっごくかわいい。
「いるでしょ」
僕がいうと図星かのように目を大きくさせる。
可愛い。
「なんでわかったんですか!」
「えーだってゆりちんすっごくわかりやすい」
「そ、そうですか!?」
ゆりちんが顔を真っ赤にして手で両頬をおおう。
「私そんなにわかりやすいかなぁ・・・。」独り言もすごく可愛い。
この子、
「オレのモンにしてぇ」
「?先輩、なんか言いました?」
「ううん、何でもないよ!」