恋する吹奏楽部
-屋上-
パーーーン
お昼休み。
イヤホンをつけて私たちが今度合奏でする「フェスティーボ」を聞いていた。
ラッパの大きな音が響く。
ネリベルが作曲した「フェスティーボ」。
打楽器と金管がフィーバーする。
私の心も今フィーバーしていた。
私はトランペット一年の氷室一歌(ひむろ いちか)。
なぜフィーバーしているかというと藤倉いわく柳葉先輩に彼氏ができたらしい。
それが死ぬほど嬉しい。
藤倉はかなりショック受けてたっぽいけど。
「一歌あああああ。」
「な、なに。・・・舞美(まいみ)。」
いししっと舞美は笑った。
一年トランペットのリーダー格、御影舞美(みかげ まいみ)。
「校内で音楽プレイヤーの使用の校則違反とは・・・やりますな一歌。」
「はいはい。」
ちなみに言うと舞美は学年代表で見た目はかなりのお嬢様だが、性格は野生の猫。
「屋上はいいなぁー!今日は天気もいいしね!」
今日は晴天の日。
それでもかすかに風が吹いいていて屋上はとても気持ちがいい。
でも日が強いので屋上にいるのはこの二人だけだ。
「藤倉クンから聞いたよー、柳葉先輩に彼氏ができたんだって?」
「そうらしいね。」
「柳葉先輩きれいだもんねー。彼氏がいても驚かないよねー。」
「舞美。」
「ん?」
「河原先輩が望月祈舞先輩と付き合い始めたんだって。」
「-----。」
舞美は目を見開いて私をじっと見つめた。
なんでこんなに複雑なんだろう。
舞美の汗が顔のラインを伝って落ちた。
私は空を仰いだ。
-教室-
「ゆり、大丈夫?」
「ううん。」
「・・・はぁ。」
鶴巻ゆりです。
お久しぶりです。
えっとですね、昨日大変な事がありました。
「ねぇ、千夏。」
私は私の前の席で下敷きで仰いでいる千夏に声をかけた。
「ん?」
「私、どうすればいいのかな。」
「さぁ?私、私のおにいちゃんがそんな人だなんて知らなかったな。」
「うぅ。。。」
「私とちがってふわふわしてるだけかと。。。やっぱり男なんだなぁ。」
「もう私どうすればいいのかわかんない!昨日の河原先輩は河原先輩じゃないんだもの!」
「ゆり、暑い?」
「暑い。」
「仰いであげる。」
「ありがと。」
昨日の出来事。。。
-昨日-
「おじゃましまぁす。」
「どーぞー。ごめんね、男の部屋だし、汚いし。」
「いえいえ!」
やっぱり思ったとおり。
河原先輩の部屋は男子っぽくはなく、ちょっとメルヘンチックでどっちかっていうと女の子っぽかった。
「早速だけどゆりちん。」
「は、はい!」
「さっきの質問、」
「ふえ?」
「好きな人。。。だれ?」
「え・・・。」
そ、そんなの先輩の前で言えるわけないじゃない!!!
しかも河音君だとかそんなん!!!!!
「ねー、ゆりちん答えてよーー。」
「え、え、えと、ぜええったい秘密ですよ?」
「もっちろん!」
「あ、えと、その、河音君です。。。」
「ぽええええええ。河音かあああ。なあああるほどおおお。」
「あ、あの」
「ん?」
「先輩の好きなお方はどなたですか?」
「えぇ!?」
「やっぱり栗花落先輩ですか?」
「奈緒?うううううん。別に奈緒嫌いじゃないけど・・・。」
「け、けど・・・?」
「奈緒には好きな人がいるからね!」
「え、ど、どなたですかっ!」
「夢雨だよ。」
「あ、東先輩ですか!!!!???」
「うん。」
「河原先輩・・・は・・・?」
「ふふふ~、知りたい?」
「し、知りたいですっ!」
「ははは、本当、ゆりちん鈍感ー。」
「え?」
バサッ
私は先輩に押し倒された。
-------!!!!??
「え、あ、あの・・・。」
「これでも、体力には自慢あるんだぜ。」
先輩の口調が変わった。
「やばい」そう思った。
「俺、ゆりちん好きだから。」
えええ!!!!???
「それでも!!こういうの、よくないと思うんです!!!」
「おせぇよ、ゆりちん。」
「ひいいいいいいい」
先輩の可愛らしい顔が近づいてきた。
でも目は男そのものを表していて怖かった。
先輩、こんな顔するんだ。
「せ、先輩ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「ゆりちんのそういう顔も嫌いじゃねぇな。」
「ふぁあああああああああ!!!!!」
先輩の舌が私の鎖骨に触れた。
その瞬間、先輩の動きがピタリと止まった。
「冗談だよぉ~~!ゆりちん反応可愛すぎー!」
「ふぇ・・・?」
「ふふふ、怖かった?」
「こ、怖いどころじゃなかったんですよ!もう!!」
私、先輩の家から飛び出しちゃった。
荷物も持ってきちゃったからそのまま帰ったの。
おじゃましましたくらい言えば良かったかな。
じゃ、なくて!!!!
怖かった。
先輩の好きな人、
私だったんだもん。
私が河音君の事が好きですって言ったあとに先輩に好きって言われて。
「千夏。」
「ん?」
「私と河原先輩が付き合ったらどう思う?」
「ブフォオオ」
千夏は飲んでいたお茶を吹き出した。