恋する吹奏楽部
土曜の朝
「あぁ…久しぶりだなぁこの感じ!」
みんなビックリするかな?
今は朝の8時半。
部活が始まってる頃。
蘭舞中学校の門をくぐった。



「か、階段きっつ…」
久しぶりに四階までの階段を登った。疲れた。
今まで二段飛ばしで駆け上がってたのが嘘みたい。
顔をあげると久しぶりの音楽室。
ミーティング中なのか静かだ。私は音楽室の窓をチラッと覗いた。
覗いただけなのに三年生のやつと目があった。
「やば、ばれた。」
「久しぶりいいいい」
三年生が音楽室から飛び出してきて、私に抱きついたりしてくる。
「みんな、ただいま!」
私は神樂 保乃花(かぐら ほのか)。
出来事は半年前にさかのぼる。

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「かぐらっち」
「なんですか?」
「ちょっと準備室きてー。」
「は、はい。」
ウィンターコンサートが終わり、コンクールに向けて練習の日々が続く寒いある日。
薫先生に準備室に呼ばれた。
「保乃花、また悪さやらかしたの?(笑)」
「なんもしてないわよ!」
同級生の同じフルートパートの槇島奏子(まきじま かなこ)がちょっかいをかけてくる。
でも本当に今回は何もしてない。
前回呼ばれたときはウィンターコンサートのソロを間違えたこと。
三年生の先輩の最後の舞台だけど、私に吹かせてくれて、死ぬほど練習したけど、間違えちゃった。
「失礼します。」
準備室に入ると、
「こんにちはー」
「こんにちはっ!」
薫先生と綺麗な女性が立っていた。
「かぐらっち、紹介するよ、この方はT都時雨吹奏楽団のフルート奏者のFUKAさん。」
「FUKA(ふーか)です。よろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします。私は神樂・・・」
「保乃花ちゃんでしょ?よく知ってるわ。」
「え、どうして?」
「かぐらっち、FUKAさんはウィンターコンサートに来てくださってたんだよ。」
「え、あ、そうなんですか・・・」
「あのフルートのソロ、素晴らしかったわ。」
「いえ、お世辞は結構ですよ・・・。」
「お世辞なんかじゃないですわ。あのソロは極めて難しいもの、中学二年生であそこまでできるのは大したものですから。」
「なぁ、かぐらっち。三年の先輩はあえて吹かなかったんだ。難しいからね。最後の舞台で恥をかきたくないのと、先輩はかぐらっちに力入れてくださってたんだよ。」
「そ、そうなんですか?私がコンクールに出れなかったからだと思ってました。」
「さすが馬鹿のかぐらっち。」
「そういう事言わないでくださいよ。。。」
「先生、そろそろ本題の方へ。」
「はいはい。かぐらっち。」
「はい?」
「君にはT都時雨吹奏楽団に半年間入団してもらう。」
「え?急ですね・・・。」
「半年後は夏休み前でコンクールメンバーが決まる。それまでにもっとフルートを極めて欲しい。資金は全て、うちと時雨楽団さんが出してくれる。」
「嬉しいですけど、受験がありますし。。。」
「時雨楽団さんがかぐらっちのためだけに特別学校を準備してくれてる。そこの学校は将来時雨楽団さんに入る可能性がある天才ちゃんたちが集まってるから仲良くしなよ。」
「いや、まだ行くなんて決まってないじゃないですか!」
「行かないのかい?」
薫先生がその言葉を口にした瞬間FUKAさんの顔が曇った。
「い、行きたいですけど。私よりもっと有望な人がいるじゃないですか。」
「たとえば?」
「美喜です!」
「あいつはもうプロだから海外留学させようと思っている。」
「夕璃は!?」
「あいつは推薦だからな。確実にK高校に行かせる。」
「奈緒ちゃんは!?」
「同じくだ。」
「若葉は!?」
「あいつは進路聞いたところによると高校ではトロンボーン吹かないらしい。」
「りりーは!?」
「あいつが一人でT都に行けると思うか?」
「絶対無理じゃないですか。。。」
「だろう?」
「でもましろんとか・・・」
「若葉と同じくだ。」
「私なんかが行っていいんですか・・・?」
「私的にはかぐらっちがいいと思う。せっかくFUKAさんも来てくださってるわけだしな。」
「・・・フルート上手になりますか?」
「当たり前だ。」
「私・・・・・行きたいです・・・・・。」
FUKAさんと薫先生が笑顔で顔を合わせた。
「決まりですね!では、今週の日曜、私がお迎えに上がります!」
「よろしくお願いします。みっちり教えてやってください。」
「はい!」
FUKAさんと薫先生がルンルンでお話する。
私はフルートが続けられるならいいかなって思ってた。

そして日曜日。
部員に送られて私はT都へ向かった。
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