恋する吹奏楽部

七月上旬。
「最悪だな。」
「な。」
俺、東夢雨と梶間佑都の二人で帰宅している途中、突然の雨が降ってきた。
近くの屋根とベンチがあるバス停で二人で雨宿りしている。
「濡れなくてよかったな。」
「ほんっと、でも肌寒いね。」
佑都がベンチに腰掛けた。
「ごめん、今日上着もってない。」
「いいよ別に!」
佑都のいつもの猫耳みたいにツンツンした頭が湿気で落ち着いている。
やっべ、色っぽい。
「あのさ、夢雨。」
「ん?」
「おれ、祈舞と別れる。」
「ブフォ」
「真面目に。」
「それはそれは、突然に。」
「別に祈舞嫌いじゃない。」
「うん。」
「でも、もう好きじゃないんだ。」
「そうか・・・。」
「うん。」
じゃ、今はだれが好き?
聞きたかったけど聞けなかった。
ていうか聞いていいのかわかんなかった。
「佑都。」
「俺、夕璃についに返事したんだよ。」
「えぇ!?いつ!?」
「修学旅行の時。」
「そ、そうなの?内容は?」
「無理。」
俺は即答した。
佑都は複雑な表情になった。
「な、なんで?」
「俺と夕璃じゃ不釣り合いじゃん。」
「え、そんなことないよ。」
「いや、だってさ、夕璃とかスタイルいいし、打楽器うまいし、リーダーシップもすごいじゃん?」
「そうだけど・・・。」
「不釣り合いだなって思って。」
「俺は、むーの方がかっこいいと思うよ?」
上目遣いで見上げてくる佑都。
俺の何かがきれた。
「佑都。」
「え、ちょ、むぅ・・・!!?」
唇と唇が重なった瞬間雨がより一層つよくなった。
「ちょっと、むー?」
「ごめん」
「いいよ。」
「ごめん・・・。」
「むーなら、い、い、いいよ?」
佑都がそっぽを向いた。
「佑都、」
「ん?」
「これ、貸す。」
俺は実は持っていた折りたたみ傘を佑都に渡した。
「じゃ。」
明日は土曜日。
噂によると、あいつが帰ってくるらしい。
俺は家まで猛ダッシュした。

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「おはようございます!」
「はろおおお」
今日も部活で朝の出席が終わると、ミーティングになる。
「むー。」
「あ、佑都。おはよ。」
「おはよう。」
しばらくの沈黙。
「あ、むー。これ!」
「あ。」
俺はかさを渡した。
「ありがとう。」
「いやいや、俺こそ。昨日大丈夫だった?すごい雨だったけど。」
「平気平気。」
「そっか。あのさ、、昨日のあのことなんだけど・・・。」
「あ、」
俺の問いかけにむーが答える前に誰かが叫んだ。
「保乃花だあああああああああ!!!!!」
神樂が帰ってきたんだ。
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