恋する吹奏楽部

「久しぶり、保乃花。」
ぽんっと私の頭を撫でる男。
オーボエの国坂海太(くにざか かいた)。
「た、ただいま。」
「おかえり。」
私にとって海太は元カレ。
時雨に行く前に私がフリました。
だって、海太一人置いていくなんて私には無理。
海太なんかマイペースだし、顔もいいし、すぐ違う子に取られちゃう。
それに時雨でたくさんの出会いがあるってわかってたから。
きっと好きな人ができちゃうのかなって。
海太にしばらく合わない間に海太への愛情が薄れるのが怖かったから。
わかってるから二人で話し合って決めた。
みんなには私がフッたていうことにしてる。
それは海太も承認してる。
「フルート上手くなったんだろ?聞かせろよー。」
「いや~むーーーりーーー。」
こうして二人でじゃれあうのも半年ぶり。
「保乃花の成長ぶりを一番楽しみにしてたのは俺だからなー」
「先生と保護者とあんた以外の吹奏楽部員にならそう言っていただくと嬉しい。」
「ちょ、俺は!」
「~♪」
「くっそおおお」
「じょーだんじょーだん!楽しみにしててくれたんだね、ありがとう!」
「おう!合奏準備だぜ、音楽室いくぞ」
「はいはああい」
今でもこんなふうに接してくれて嬉しい。
「ありがとう、海太。」
「何度も言うなって、照れるだろ?」
「うっわあああ、海太照れてるきっもおおお」
「き、きもい!!?」
「うん、国坂くんすごくキモスティックやね。」
「国坂いつからそんなふうに育ってしまったの。。。」
いつの間にかアルトサックスのりりーや、ラッパの千穂も海太いじめに参加。
「あ、海太とほののがリア充してる」
「爆ぜろ。」
「仲良しだね~^^」
テナーの栞鳳、アルトの真白、バリトンのひかるまでも。
ひかるは少し違うけど。。。
「おい海太一人だけリア充はよせよ。」
「いや、ちげえええから!!」
最近祈舞と別れたらしいトロンボーンの佑都。
「てかお前また身長縮んでね?」
「あああ、海太それ昨日も言ったろ!?」
「えー、うっそまっじでぇ?じゃあ毎日縮んで(ry」
「だまれ、佑都に近づくな。」
「近づいててきたのは佑都の方ですううう!!!」
突然バスクラの夢雨が現れて海太に一発。
そうそう、佑都と祈舞が別れた原因が夢雨だって同期で同じフルートパートの槇島奏子に聞いた。
「あ、保乃花。おかえりー、遅れてごめん、打楽器部屋から楽器音楽室に運んでて声かけれなかった。」
「久しぶり!」
「おかえり、保乃花。」
「あとでフルート聞かせろよー。」
「おかえり。」
夕璃率いる打楽器の五人も現れて、私と海太の周りにはたくさんの人が集まった。
「わぁ!ありがとう!!」
「保乃花ーーー!とりあえず譜面渡すから今日は見学しててー。」
「はーい」
私は奏子に渡された譜面をみた。
あ、これ。
「奏子、これ私吹けるよ?」
「え、なんで!?」
「時雨で今年の課題曲全部練習させられて。。。」
「まじ!?すっげえ!!」
「じゃあ、いきなり成長したフルートの音聞けるんだな。」
「海太!そんなに期待しないでよ!プレッシャーかかるじゃんかー!」
「おおい!みんな保乃花が課題曲全部吹けるらしいぜ!」
海太が声を上げるとみんなこっちを見てくる。
「ちょっとおおお、プレッシャーかけないでよおおお!!!」
プレッシャーには弱い。
ウィンターコンサートで十分わかったんだよ。
ちなみに言うとフルートはそんなに上手くなってない。
自信がないだけ。
本当は半年の間でめっちゃ成長したと思ってる。
でもみんなも半年間本気で練習してたに違いない。
みんなに褒めてもらえるか不安。
あと、武流のことも言わなきゃ。
なかなか言い出せない。
プレッシャーにもなににでも弱い私。
一歩も成長なんてできてないんだ。
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