恋する吹奏楽部

「なゆ。」
「?」
「・・・。」
「・・・・・・わかった。来て。」
「ありがとう。」
私とりりーの会話に、一緒に練習していた栞鳳とひかるが首をかしげた。
私とりりーは教室を出た。
「ごめんな、なゆ。うちのせいで。」
「いい。私のせいでもあるから。」
「・・・。」
私たちが女子トイレの個室に入った。
そしてりりーが目をつぶる。
私はりりーの唇にそっとキスをした。
私とりりーがキスをしたその日から私はキス魔に、りりーは私依存になった。
私、じゃなくて、私のキス・・・にね。
りりーは我慢できなくなったら私を呼ぶ。
そして二人でいつもこっそりキスを何度も交わしている。
「なゆ、もっともっと。」
「しょうがない。」
私はただりりーが好きなだけ。
このりりーを独り占めしているのを感じたくてキスの雨を降らす。
りりーは多分私じゃなくて口付けという行為にゾッコンなんだと思う。
絶対河原を想像してるんだな、いつも思う。
だって普通女子同士とかないじゃん?
りりーは単純すぎる脳みそだから頭の中は河原とサックスのことしか入ってない。
あ、あとお菓子。
そうだとしてもりりーは可愛すぎる。反則。
実際私の頭の中りりーしか無いから私はりりーより単純な頭なんだと思う。
それくらい、りりーが大好き。
好きで好きでこの想いが止まらなくなって、溢れて、我慢できなくなって、りりーにキスしちゃった。
私はこれまで何人もの男と付き合ってきたけど、キスだけはゴメンだった。
汚い男どもとだなんて考えられない。
気持ち悪くて吐き気する。
いわゆる潔癖症。
だから実は汚い男のくせに表ではほわほわしてモテまくってる河原が大嫌い。
あの調子じゃ、ゆりちゃんも手遅れだわ。
ごめん、ゆりちゃん。
こんなこと考えつつ、りりーとの行為はまだ続く。
「な、なゆ・・・っ」
「?」
「なゆ、なゆ、なゆぅ」
そんなに私の名前を呼ばないで。
どうせなら河原の名前でも呼んでみなさいよ。
そしたら私もりりーのことが嫌いになって、傍から見たら気持ち悪いこの行為もしなくていいんだ。
私のこの自己満足もしなくて済む。
私はキスの雨をやめた。
「な、ゆ・・・?」
「りりー、」
「ん?どったの?」
「私、りりーが好きなの。」
「え、あ、うん。わかる。」
「そう。で?」
「ほぇ?」
「ふりなさいよ。」
「え!?」
「気持ち悪いでしょ。」
「え、ぜんぜん。」
「なんで?」
「だってなゆ好きやもん。」
「違う、あなたがすきなのは河原。」
「千穂やん?千穂やんはちがう。」
「は?」
「千穂やん、今頑張ってる。」
「?」
「千穂やん、ゆりちんが好き。祈舞、迷ってる。めぐ、千穂やん死ぬほど大好き。ちなっちゃん、千穂やん好きやけどお兄ちゃんやから諦めてる。__ゆりちんは、ゆりちんの心の千穂やんへの気持ちが大きくなってる。私、みんなに勝てない。今1番なゆが好き。」
「は?」
「うち、気がついた。なゆが好きなんやって!」
「い、意味わかんないわ。」
「な、なゆ、うちのこと嫌い?」
「好きよ。でも、女子同士って気持ち悪くない?」
「気持ち悪くない!本気の気持ちは気持ち悪くなんかないんやって!!」
「わかってるわ!もうこんな関係になってしまって、元の「友達」には戻れない!でも世間の目が怖いの、私。弱いの。それにこれから私の気持ちが暴走したら止まらなくなってりりーを傷つけるかも知れない。それは絶対嫌なの。りりーには普通に幸せになって欲しかったの!」
「うち、今が1番幸せなんよ!!!」
「河原は!?」
「千穂やんは今ゆりちんと付き合ってんねんてば!!うちらみんな諦めてんよ!めぐはわかれへんけど!」
「っ!」
これはちょっとりりーのつらいとこをついちゃったかも。
「そっか・・・。ごめん。」
「いいよ。うち、なゆ好きやもん。」
「ありがとう。」
私はりりーを抱きしめた。
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