恋する吹奏楽部
「せんせー。」
「なに?」
「早く結婚しましょ((」
いけめんの顔に岡重先生のパンチが命中。
この、いけめん・・・ぱっと見、不良の三年生、飯島 紡(いいじま つむぐ)は吹奏楽部クラリネットパート。
授業は抜け出すわ、ガム噛んでるわで問題児な紡だが、部活にはちゃんとくる。
その理由はこの顧問、岡重薫にあった。
吹奏楽部には一年の時からいたが、ほぼ幽霊部員だった紡。
それから一年たち、紡が二年になるとき、新顧問の岡重薫が現れ、紡は一目惚れ。
岡重とたまたま同じ楽器を吹いているのをいいことにいつも準備室で岡重先生のレッスンをうけ、ますます岡重先生に惚れて、先輩が卒業し、三年になってから岡重先生に告白。
あっけなくフラれたが、付き合うのは諦め、結婚を申し出てくるようになった。
岡重先生がメガネをかけるのをみて、伊達めがねまでかけ始めた。
よくわからない人だ。
「おい、残念すぎるいけめんこと飯島くん。」
「はいなんでしょう。」
「早く彼女でも作りなさい・・・。」
「付き合ってくれるんですか!?」
「違うわぼけっ」
岡重先生の巴投げ。
「はやく出て行って、楽器吹きなさい。一年生に抜かされちゃうわよ。」
「はーい。」
紡が部屋を出て行った。
「しつこいですね、紡くん。」
「あぁ。」
準備室のハープのチューニングをしていた美蓮先生が苦笑いする。
「紡くん、かっこいいですし、彼女いっぱいいそうですよね。」
「うん。でも残念すぎるんだよ。」
「ははは^^。」
岡重先生がめがねをはずす。
「先生、めがね外したらめちゃめちゃ美人ですよね。外さなくても美人ですけど。」
「美蓮ちゃんにだけは言われたくなーい。」
「そんなことありませんわ。何人でしたっけ?婚約者。」
「さぁ、54人くらいいるんじゃね?」
「婚約者だけでA●B48ができちゃいますね。」
「あははー。婚約者っていっても、候補だからさ。」
「羨ましいです。」
美蓮先生が目を細めて、ハープを奏でる。
岡重先生はハープの音にうとうとさせられながら、クラリネットを組み立て始める。
「先生、そういえば、極美ちゃんはどうなったんですか?」
「今担任と二人きりで喋ってるみたい。でも私が呼んでるって部長が伝えてくれたみたい。」
「あら、夏目さんいい仕事しましたね。」
「部長が伝えてくれても、極美が来なかったら意味ないんだが。」
「担任とお話が終わったら次は生徒相談室でしょう?それを避けてくるんじゃないですか?」
「だといーけど。」
「そういえば、紡くんが来る前、誰とお電話されてたんですか?」
「極美のお母さん。一応、許可をね。」
その言葉だけで美蓮先生はすべて理解した。
さすがエリートお嬢様。
「結果は?」
「いいって。極美が楽しそうなのがまた見たいって。」
「そうなんですか。あとは極美ちゃん次第ですね。」
「あぁ。」
岡重先生がチューニングを始めたので、ハープをしまう美蓮先生。
「え、ハープ続けてていいよ?」
「いえ、極美ちゃんがもうすぐきそうなので。」
「え、あ、そう?」
「じゃ、ちょっと生徒の練習見てきます。」
「あ、お願いします。」
「はい。」
いつ紡や極美が来るのかどきどきしていたが、ドアがノックされると、一気に気持ちを切り替える。
「つれーしまーす。」
入ってきたのは、金髪ロング巻き毛で短いスカートにメイクばっちり、アクセばっちりの極美だった。
「失礼しますくらい真面目に言いなさい。」
「・・・。」
黙り込む極美に
「極美。」
と呼ぶ。
極美は顔をあげて悲しそうな顔をした。
バトルの始まり。