恋する吹奏楽部
「せーのっ」
私は島津夕璃。打楽器のパートリーダーです。
今は勇舞の打楽器の皆さんと蘭舞の助っ人として来てくれた一年男子と楽器の運搬中。
音だしが終われば勇舞と蘭舞の男子部員も来て一緒に楽器運搬になる。
一人で大型楽器を持って階段も上がっているとき。
階段を踏み外してしまった。
「あっ、」
やばい、楽器が!!
でもこのままだと楽器の下敷きになっちゃう!
「だ、だれかーーーーー!!!」
「夕璃っ!」
「夢雨!」
後ろに倒れそうになった瞬間、誰かに支えられた。
夢雨だった。
「大丈夫か!?」
「が、楽器は大丈夫・・・。」
「お前だよっ」
「え、」
「コンクール前なんだから、自分の体くらいしっかり守れ!」
そして夢雨は「まったく、」と言って微笑んだ。
「上まで手伝うよ、ほら、せーのっ、」
「あ、ありがと。。。」
夢雨ってかっこいいな。
いけめんだし、やさしいし、バスクラうまいし・・・。
おまけにモテモテ。
あ、吹部で一番のモテ男はラッパの千穂で、モテ子はクラの美喜。
モテ子っていったらまぁ、奈緒とかりりーとか、保乃花とかそりゃいっぱいいるけど・・・。
ダントツで言えば美喜ね。
吹部親衛隊ってあるけど、美喜親衛隊もあるくらいだからね。
いやぁ、やばいわぁ。
ちなみに吹部男子モテ男ランキングは
一位 千穂 ラッパ
二位 夢雨 バスクラ
三位 海太 オーボエ
四位 佑都 トロンボーン
五位 紡 クラリネット
紡・・・はね・・・・。
元ヤンだし・・・、今は残念なイケメンになってるからね(笑)
私の中では今も一番は夢雨。
千穂も海太も佑都も紡もかっこいいとは思うよ。
でも、どうしても諦めきれないの。
「返事が聞けただけで十分」
前まではそれだけだった。
でも、今は・・・。
夢雨をなんとしてでも私のものにしたくて。
私の事をもう一度よく見てて欲しくて。
それに。。。
この前・・・。
私の体に乗り移ったもうひとりの自分。
自分を見てくれない夢雨に対する醜い気持ちが暴走して、
佑都しか見えてない夢雨を拒み続ける気持ちが止まらなくて、
夢雨の首へと伸びる自分自身の手。
あれは、自分が受け付けたくない現実そのもの。
「よし、じゃ、ここからは行けるよな。俺戻ってチャイム運ぶの手伝うからさ。」
「あ、ありがとう!」
「おう。」
夢雨が階段を下りていく。
ここからホールまでずっと楽器を運んでいく。
「よし。」
楽器を持ち上げた時、なにかにぶつかった。
「うわぁ!」
「え、なに!?あ、メグ!」
「ゆ、夕璃ちゃん!」
トランペットのメグにぶつかってしまった。
あ、そういえばメグって千穂の事好きだよね。
千穂って一年生と付き合い始めたよね・・・。
「メ、メグ!」
「何!?びっくりさせないでよー。」
「悩める乙女の恋愛相談に乗って欲しいの!」
私はこの時わすれていた。
メグが超ヤンデレだということを。