恋する吹奏楽部
「優歌ちゃ~ん、これ、優歌ちゃん宛に手紙。」
「え?」
ここは二年生のラッパ、柳葉 玲(やなぎば れい)、トロンボーンの森島 華憐(もりじまかれん)、西友 流奈(にしとも るな)、そしてトランペットの私、椿原 優歌(つばきはら ゆうか)の四人が使う部屋。
今から部屋の荷物を整理して、終わればホールで合奏を始める。
そんなとき、バストロンボーンに初恋をしたちょっと変わった女の子、華憐がドアのポスト口に刺さってた私宛の手紙を持ってきた。
「誰から?」
「わかんな~い、先輩からじゃない?」
華憐が「はい」と言って手紙を渡してくれた。
封筒に書かれた文字をみて私は目を見開いた。
「っ!」
【椿原 優歌様 椿原 優羅】
「ゆ、優羅っ!?」
「優歌どうしたの?」
「あ、ううん。なんにもない。」
「大丈夫?」
「うん。大丈夫!全く玲も心配症なんだから!」
「そ、そんな事ないわよ。」
「玲ちゃん彼氏できてから雰囲気柔らかくなったよね~。」
「やめてよ、彼氏は関係ないでしょー!」
「うんうん!私も思った!!前より話しかけやすくなったしー!クラスで友達も出来たでしょー!」
「ま、まぁね。少しは。」
「あ、もうそろそろ移動しなきゃだよ。行こうー!」
「流奈待ってぇ~!玲ちゃんも優歌ちゃんも行こうよ~!!」
「あ、ごめん、みんな先行ってて!」
「優歌いかないの?」
「ちょっとペン探しててさー。」
「私も探す~!」
「いいよいいよいいよ!先行ってて。」
「優歌が言うんだから先行こー。」
「そうね。優歌、先行ってるよ。」
「うん、ごめんねー!」
三人がそれぞれの楽器を手にして部屋を出て行った。
三人の声が遠ざかるのを感じ、封筒を開けた。
【お姉さまへ。
初めまして。お姉さまの妹の優羅です。今、早くお姉さまに会いたい気持ちでいっぱいです。
私の我儘なんですが、今日中にお会いしたいんです。
というわけなんで、今日の皆さんの消灯時間前の九時に海辺の近くにある海の家のステージに来てくれませんか?できれば楽器を持ってきてくれればと思っています。
運命の再会になればいいと思っています。
優羅】
「優羅・・・。」
さっき、音だしのときに勇舞のオクテットの闇野先輩があいさつに来てくださった。
その時に
「椿原・・・さん・・・?」
「は、はい!」
「優羅ちゃんのお姉さん?」
「え、そうですけど・・・どうして妹をご存知なんですか?」
「優羅ちゃん、うちのトランペッッターだよ?あれ、姉妹なのに学校違うの?」
「・・・。」
まさか優羅が勇舞のトランペッターだなんて・・・。
闇野先輩の話によると一年の中ではダントツで上手くて、一年でコンクールメンバーにもなってて、かなりすごいらしい。
いやぁ、妹がライバルだなんて・・・。
妹の頑張りぶりを応援したいし、正直妹がそんなにすごいって言われてて嬉しい。
でも、複雑・・・。
妹の顔、まだ見たことないのになんでこんなに私お姉さんぶってるんだろう。
私は手紙をリュックにしまい、楽器をもって、部屋を後にした。
今、大きな事件が起きているとも知らずに。