恋する吹奏楽部
-名雪真白視点-
「おっはー、なゆ。」
「・・・おはよう。」
「「おはよー」」
「おはよう・・・。」
朝にはめっぽう弱い私。
おまけに朝からテンションの高いりりーと、トランペットの伊賀崎 姫子(いがさき ひめこ)のキンキン声を浴びせられ、ちょっと機嫌が悪い。
でも、帯刀道場(たてわきどうじょう)の落ち着きがある一人娘、トランペットの帯刀 林檎(たてわき りんご)の淹れてくれた温かいお茶に和む。
「昨日は大変でしたね。」
林檎がみんなの前に正座する。
「昨日?」
昨日ってなんかあったっけ。
「本当・・・。うちの千穂と優歌ちゃんがお騒がせしました。」
姫子のその後に続く。
「う、うちのって、千穂やんはうちのやでっ!」
りりーまで。
「ご、ごめん。昨日ってなんかあったっけ?」
「「・・・。」」
な、なんか私今KYになってない?
「そっか。そういや、昨日真白寝てたよね。」
「あ、そっかー、ごめーーん、なゆぅー。」
「私が説明いたしますわ。」
林檎のわかりやすい日本語の説明で(姫子とりりーは何語喋ってるかわかんないから。)昨日のトランペットバトルを理解した。
「そ、そうだったの。トランペットパートって大変なのね。」
「迷惑かけてごめんよー。」
「千穂やんとゆーかちゃん大丈夫なん?せんせーに怒られたん??」
「まぁ、そりゃ、注意くらいは受けたでしょ。さすがに。」
「でもうちの顧問って笑って誤魔化す派じゃないかしら。」
「たしかにぃー。」
私は三人の話を聞きながら疑問に思った事を聞く。
「勇舞のトランペッターはその後どうなったの?」
「・・・さぁ?でも同じように注意受けたでしょ。」
「こちらは大丈夫でも、勇舞の方は危ないんじゃないかしら。」
「どーゆーことー?」
林檎のかわりに私が説明する。
「オクテット候補なんでしょ?その子。それが蘭舞に負けたってことは勇舞にとってかなりのデメリット情報なんじゃない?ネットまで回ったってことはコンクールの審査員までこの情報が届くのも時間の問題だし。かなりの罰を受けるんじゃないの。」
「デメリットって何どーゆー意味?」
「メリットの逆の意味。簡単に言うと、メリットはプラスって意味で、デメリットはマイナスってことだよ。つまりマイナスな情報って事。」
「そうね、柳先生って怖そうだものね。」
みんなうんうん、と頷いた。
そのとき、ドアが勢いよく開いた。
「な、奈緒ちゃん!?」
「もー、びっくりしたやんっ!!」
ドアを開けたのは隣の部屋の栗花落奈緒。
「姫子!林檎!大変なのよ!!」
奈緒がすごい形相で姫子と林檎を睨みつける。
「な、なに?」
「どうされました?」
奈緒が口を開いた。
「優羅ちゃんが昨日の件で怒られて部活辞めさせられちゃうらしいの!それを聞いて優歌ちゃんが柳先生のところに行っちゃって!!」
「まじ!?展開早っ。」
「ほんまや、なゆなんて今起きたとこやのに。」
りりーのセリフを聞いて奈緒が私のボサボサの頭を見て、吹き出した。
「失礼なやつね。低血圧なんですー。」
「ごめんごめんwで、姫子、林檎!私たちも優歌ちゃんの後を追っていかなきゃ!」
「そうだね!柳先生を説得しなきゃ!」
「私も!まだまだ期待できる子をそんなあっけなくやめさせちゃうなんて、そんなの反対です!」
「メグと千穂は先に行ってるわ。玲ちゃんと美歌は闇野さんのところに行ってる。私たちも行くわよ!」
美歌とは、千鳥 美歌(ちどり みか)のことで、蘭舞ラッパの三年。
ラッパの三年生、奈緒、千穂、巡美、美歌、姫子、林檎、そして二年生の玲も参戦で、ラッパ総動員して柳先生を説得することに・・・!