恋する吹奏楽部
宝島
-椿原優歌視点-
「私は優羅をやめさせてなんかいないさ。」
ゆっくりと語りだした柳先生。
「それは・・・どういう意味ですか・・・?」
栗花落先輩が尋ねる。
「・・・あの子は自分から退部したんだ。」
「・・・え?」
嘘・・・。
優羅が・・・ラッパをやめただなんて・・・?
次の柳先生の一言にみんな唖然とした、
「優羅は、蘭舞に移動する。」
「 」
_________はい?
「ちょ、ちょっと、どどどどどういう意味でsy、すか!?」
「わぁ、優歌ちゃん噛みすぎーw」
河原先輩がケラケラ笑うけど、私は動揺を隠せない。
それは玲も、先輩も同じだ。
「そのままの意味だ。」
柳先生が部屋を出て行った。
それと入れ違いに加谷先生が入ってきた。
加谷先生も勇舞顧問のひとり。
「みんなおはよ、朝食の準備が出来てるよ。」
「・・・は、はい。」
とりあえず、食堂に向かった。
-堤春菜視点-
「あ、春菜。」
「優歌!ごめんね、さっきは協力できなくて!」
詠唱との件があって私は結局優歌に協力することはできなかった。
「ううん、もう大丈夫、解決したっぽい・・・。」
優歌が曖昧に答えた。
「そ、そう?ならいいけど。」
詠唱たちの学校、式舞中学校は別の館の食堂で食事。
私たち蘭舞と勇舞は同じ食堂で朝食をとっている。
「みんなーーーーー、だまれぇーーーーい」
突然、食堂中に広がる声。
岡重先生が叫んでいる。
「食べながらでいい、ミーティングを開始する。」
先生の一言でみんなが静まり返った。
「まず、みんなご存知椿原優羅の件だが・・・。勇舞をやめて、姉の優歌と同じ、蘭舞に転校することになった。」
ザワッ
「昨日のトランペットバトル、見させてもらった。」
柳先生が話し出す。
蘭舞の部員が一斉に、目玉焼きを頬張る河原先輩に視線を向ける。
そして隣に座っている栗花落先輩と志摩先輩が苦笑い。
柳先生が話を続ける。
「私と優羅で話し合った結果、優羅を蘭舞に置くことにした。一つ目の理由は優羅の優歌への熱い思い、お互いに十年以上も離れ離れだったんだ、もう二人一緒でもいいだろう。そして、もう一つの理由は、伝説のオクテット候補の優羅の実力をもっとあげたい、そのためには蘭舞に行くべきだと、私は考えたのよ。」
勇舞も蘭舞もザワザワし始める。
「文句あんなら今ここで言え。私が相手してやるからさ。」
こんな事言われて文句など言えるわけがない。
これで、やっと、
二人一緒になれたんだね、
おめでとう、優歌、優羅ちゃん。
こうして椿原問題は幕をとじた。