恋する吹奏楽部
-赤尾絶露視点-
未来の俺、つまり寿御のお父さんは無事に聖神を捕まえることができ、寿御と一緒に未来へ帰った。
コンクール出ろって言ったのにな。
合宿が終わり、コンクールが近づき、音楽室がピリピリとした空気に包まれた。
「赤尾。」
「ん、なんだ。」
闇野が珍しく俺に話しかけてくる。
「・・・赤尾って、」
「ん?」
「私の事好きなの?」
ここで好きといえば寿御に怒られるかな。
でも好きじゃないって言えば嘘になるし・・・。
「急にどうしたんだよ闇野らしくないな。」
「赤尾が私の事をそういう目で見てるって聞いた。でも、」
「でも?」
「私には好きな人がいないから。もし赤尾が噂の通り私の事が好きなら、諦めて欲しかったの。そんな噂、不必要だもの。」
「・・・そうだね。君はそういう子なんだ。」
「・・・?噂違うの?」
「いや、そういう意味じゃなくて、闇野は、男嫌いだろ?」
「うん。吹部以外の男子は受け付けない。」
「だろ?・・・そもそもなんで男がそんなに嫌いなんだ?」
「・・・お父さんとお兄ちゃん。」
「え?」
「お父さんが、怖い。」
「怖い?」
「お父さんとお兄ちゃんは私の事を嫌っているから、私も嫌いなの。気がついたときには周りの男子もお兄ちゃんと同じくらいの体が大きくて、乱暴で。」
「俺もそう見えるのか?」
「吹部の男子はちがう。」
「なにが違うんだよ」
「吹部はみんな家族なんだもの。特に赤尾と風間には副部長で、部長の久亜の守りをやってもらわなきゃ困るんだもの。」
「そうか・・・。」
「ま、噂が嘘ならそれでいい。もう広まることもないだろうしね。」
「・・・そうだね。」
「うん。」
そのまま闇野は部屋を出て行った。
こんな状態からどうやって上月詠唱と結ばれるんだってんだ。
本当、わかんないことばかり。