恋する吹奏楽部
ホールニューワールド

-美蓮日菜子の過去-

蘭舞の前に私が勤めていた学校の話。

「美蓮せんせーい!!」
「おはようございまーーす!!」
「おはようございます、いいお天気ですね。」
今年から、この学校で教師生活を始めることになった私。
吹奏楽部の顧問をやらせていただいてて、生徒のみんなも私と仲良くしてくれ、とても充実した毎日を過ごしています。
家の教育がとても厳しく、男性と話すことを禁止されていた私は同じ吹奏楽部の顧問の男性の先生に密かに憧れていました。
あんなかっこいい指揮を振りたい。
そう思った私は毎日毎日、その先生をみて、研究しました。
そのおかげで、今も蘭舞で指揮を振ることができています。
でも、そんな幸せな日々は長く続きませんでした。

全国大会の出場が決まった一ヶ月後。
隣の県のテーマパークでの招待演奏の依頼がきました。
その日が、世界で一番最悪な日になったのです。
演奏が終わり、自由行動の時間に、悲劇は起こる。
部員が全員で乗ったジェットコースターが墜落事故。
部員の全員が帰らぬ人に。
それから嫌いになった、吹奏楽が。
蘭舞の子をみてると思い出してしまうから。
あの笑顔を。
憧れの先生は教師をやめてしまいましたし、吹奏楽部がなくなっちゃったんですから。
吹奏楽にはトラウマがある。
出来ればそのままコーラス部にいたかった。
でも、やっぱり楽器の音はいい。
人の歌声を超える、何かがそこにある。

生きて。

楽器を、吹き続けて。
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