恋する吹奏楽部
-勇舞吹奏楽部-
関東大会がおわり、楽器運搬もおわり、吹奏楽部全員は音楽室に集められた。
時刻は九時半を過ぎていた。
「みんな今日はお疲れ。一年生はもう遅いから帰って。」
柳先生の指示に従い、一年生は夜道を帰っていった。
残ったのは二年のコンクールメンバーと、三年生全員。
皆涙を我慢しすぎて目がパンパンに腫れている。
「えっと・・・。皆、お疲れ。よく頑張った。」
柳先生が話す。
「私はよくやったと思うよ。・・・ありがとう。」
柳先生が顔を手で覆ったのと同時に絶露がボロリと涙をこぼした。
「先生っ、ありがとっ、ご、ざいましたっ!」
そして絶露が泣き出したのと同時に部長、副部長、加谷先生、全員の目に涙が。
「皆泣かないで、涙うつるじゃんっ」
部長の久亜が涙をこぼした。
「私たちもう引退?」
「そうよ、」
「そんなんいや、私の夢、皆で全国の舞台で歌いたい。楽器吹く。」
「・・・真衣、」
「皆で金とるんやって!」
「真衣!!」
真衣と琴璃が会話を交わす。
「真衣ちゃん、それは二年生と一年生に任せよう、ね?」
「・・・うん。」
副部長の詠斗が沈めた。
「真衣ちゃんの気持ちはよくわかるよ。三年生の皆も真衣ちゃんと同じ気持ちのはずだから。でしょ?」
加谷先生が涙しながら真衣にウインクした。
真衣はコクンと頷いた。
「えーっと、とりあえず。三年生はいままでお疲れ様でした。今度また引退式を開くから、みんな絶対来て欲しいな。後輩にもちゃんとあいさつして欲しいし。」
このあと部長の号令と共に三年全員先生にありがとうございましたをいって、解散した。
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帰り道。
本当なら私は全国に出れることをどきどきして家に帰るはずだった。
今の気分はもう言葉では表しきれない。
強豪校の名前はもう私たちの代が消し潰してしまった。
「えーと。」
「なんだい、久亜。」
私の隣を歩くえーと。
相変わらずすごく男前な表情。
「今日でオクテット解散?」
「はは、そうかもな。」
そういってえーとが私を抱き寄せた。
「えーと、ここ住宅街・・・。恥ずかしいよ。」
えーとの体が震える。
泣いてるんだ。
「久亜・・・。久亜・・・。」
「・・・えーと。泣いちゃだめだよ。」
「だって・・・最後だ、最後だったんだ。最後の演奏だったんだ・・・!」
みんなで毎日毎日合奏した。
何度も何度も演奏会があった。
みんな、楽しかった。
どんなことがあってもみんな一緒だとチャンスに変えることができたし、何事もたのしく思えた。
「ねぇ、えーと。」
えーとが体を離して、私の顔を見た。
「?」
「・・・・・もう、あの日々には戻れないんだよね?」
「・・・。」
「楽しかったね、三年間。」
「・・・久亜!」
えーとが強く私を抱きしめた。
これで、オクテット解散。