恋する吹奏楽部

今日で保乃花とお別れだ。

保乃花は全国大会には出場せず、かわりに二年生の堤さんが全国大会に出る。

保乃花はこれからずっと時雨音楽団でやっていくんだ。
別にもうなんとも思ってない。
なのにあいつは・・・。
保乃花はまだ気を使ってやがるから。


俺は国坂海太。三年でオーボエ吹いてる。
三年のフルート、神樂保乃花とは以前お付き合いをさせていただいていた。
別れた理由は、保乃花が時雨音楽団に行くから。
それに次は正式に入団するとか。
だから別れることにした。

それに、俺には保乃花はもったいない。

色は白いし、フルートのように細いし、髪はサラサラでトップから肩まである三つ編みがどこか幼く見えて、初めてあった一年の時となにも変わらないあの純粋な大きな瞳。

そんなかわいい保乃花は俺には似合わない。

もったいない。もっといい奴がいる。
でもって保乃花も気付いてたんだ。

時雨にいったらたくさんの出会いがある、だから保乃花から別れを告げられた時、すぐに承諾することが出来た。

実際時雨で彼氏もできたらしいし。
これでめでたしめでたしなはず・・・。


-4月-

「えーと、オーボエにようこそ。」

新入生がやってきた。

三年オーボエは俺一人。

二年生はオーボエはいない。

今回一年生二人が入ってきた。
女の子二人。

一人は高井 みさ(たかい みさ)ちゃん。
学年で一番身長が小さいらしく、みんなよりもすこし発育が遅れてるらしい。
肩くらいまでの黒い髪。
黄色のカチューシャが特徴的な女の子。

もうひとりは山澤 要(やまさわ かなめ)ちゃん。
身長は高くもなく低くもなく平均的だが、細い。
足が異様に細い。
ビーズがついた猫耳カチューシャが可愛らしい女の子らしい女の子。


何この子達。


「みさちゃんに要ちゃん。よろしくね。俺は三年の国坂 海太。二年生はいないんだ。」

「「よ、よろしくおねがいしますっ!」」

何この子達かわいい。


これがみさちゃんと要ちゃんとの出会い。

この二人が来てから、毎日忙しくなった。
教えたり、譜面配ったり、フルートファゴットパートや木管全パートにあいさつに行ったり、すっかり保乃花の事を忘れることが出来た。

本当は心のどこかで保乃花を思う自分がいるはず。

でも、今は一年生にメロメロだからさ。
保乃花はさっさと時雨のやつとらぶらぶになればいいよ。

そして俺の事は忘れてさ。

フルートがんばってよな。

【俺はいつまでもお前の味方だから、お前の事大切な仲間だって思ってるから。
関東大会終わっても俺ら忘れないでくれよな。夏休み楽しもうぜ。】


俺がそう一言声かけただけであいつは「うん!」って笑顔になるんだ。

多分そんなとこに惚れたんだろうな。

でも俺はこっちで一年生立派なやつらに育てるから、お前は時雨で頑張れよ。

安心していけよな。

全国はお前の分までがんばるからさ、


さよなら俺の初恋の人。

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