恋する吹奏楽部
♬シ ラ シ ド レ ド シ
「むぅーう!」
「何?」
「ここ教えてー!」
「あのなぁ、ゆーと。今部活中なんだからトロンボーンの練習して・・・。」
「だって塾の宿題おわんない~~~」
「しょうがないなぁ、一問だけだぞ。」
「やったぁ!ありがとう!むう!!」
俺はバスククラリネットの東 夢雨(あずま むう)。
もうすぐ引退の3年だ。
こっちのちっちゃいうるさい猫は俺と同じ3年のトロンボーンの
梶間 佑都(かじま ゆうと)。
すごく俺になついている。
「ここの問題なんだけどさぁー」
「ん?ここはな・・・。」
次の瞬間手になにかの感触。
自分の手を見るとそこには相手ゆーとの手があたっていた。
ゆーとの手、
俺よりふたまわりくらい小さかった。
よくこんなんでトロンボーンふけるなぁ。
ゆーとの指はすごく細い。
折れそう。
爪が綺麗だ。女子か。
ゆーとの手。
「む、むう?」
「え」
「恥ずかしい///」
気がつくと
「あ。ご、ごめん。その問題、ほかのやつに教えてもらって。俺わかんない。」
「むう?落ち着いてよ!」
俺はその場から立ち去った。
だって
「男子の手を自分から握るなんて......。」
恥ずかしくて誰にも言えない。
ゆーとの手、綺麗だった・・・。
今も自分の手が熱い。
それよりもっと自分の体が熱かった。
しっかりしろ、俺!!!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
佑都視点.
「むう・・・。」
夢雨から俺の手を握ってきてくれた。
夢雨の手はすごく大きくて、まるで頼りない俺を包み込んでくれているよう。
俺が、
俺が、
もしも、
女だったら、
もっと先があったかもしれない。
俺がもし女だったら、
夢雨の事が、
大好きだったかもしれない。
俺がもし女だったら.....?
♬フ ァ シ ミ