恋する吹奏楽部
-勇舞中学校正門前-
夏休みも終盤にさしかかったある日。
「ひっさしぶりに来たね、勇舞。」
「確かに、卒業以来だね!」
勇舞中の正門には二人の男女。
背が高い、爽やか男子と、真っ赤なパンプスが印象的な凛々しい女子。
見たところ高校生なのだが、二人ともかなり大人びているし、何より肩や背中に背負っている楽器ケースからしてだいぶかっこいい。
彼らは何をしに来たのか?
彼は伝説のオクテットのテナーサックスの北原 忍(きたはら しのぶ)。
彼女は同じく伝説のオクテット、ファゴットの白畑 初(しらはたけ うい)。
勇舞のOGOBなのである。
今日は現役生のレッスンを行うために勇舞に来た。
「でも、残念だよねー、」
「なにが」
「今年、ダメ金だって」
忍は「まぁな…」も言って校舎を見上げた。
「俺らだって全国金はとれなかったけどな。」
「そうね、いくら伝説のオクテットとか言っても凄いのはあの子だけだし。」
「お前も凄かったよ。」
忍が初の手を握った。
「忍」
「俺はお前がいたから頑張れたよ。」
「…ばかじゃないの///」
「さぁ、行こう。」
「えぇ。」
今日は勇舞の新部長、新副部長が決まる。