恋する吹奏楽部

学校をすこし離れたところにある蘭舞坂。
全国大会を控えたある日。
今日も放課後、むーと一緒に帰宅していた。
「・・・佑都。」
「にゃっ、な、何!?」
むーが突然立ち止まって、俺の手を掴む。
「・・・。」
「む、むー・・・?」
「やっぱり、俺・・・。」
「へっ?」
「お前の事・・・、好きだからさ。」
!???
「え、ちょっとまって、むー。」
「お、おう。」
ちょっとまってちょっとまってちょっとまって。
心の準備がね、まだなのね。
てか、これなんのジョーク!?
本当、そういうのやめません!?
こっちはガチなんですよ!?
どうしよどうしよ、てか前、手つないできたのむーだし、キスもむーからだったし、今回の告白もむーからだし、ちょっと俺ヘタレってない?
だめだ、ここはやっぱり俺だって男だし、かっこいいとこ見せなきゃ!
「むー!」
「!?」
むーが突然の俺の大きな声にびっくりして振り返る。
俺はむーの両頬の手をやり、思いっきり自分の顔に近づける。
あ、やばい、近い、近すぎる。
「え、ちょ、ま、佑都っ」
「な、なんだよっ、前はむーからやってたくせにっ!」
「でもっ」
「うるさいっ」
むーと俺の距離、あと1センチ。
むーの荒い息が俺の唇にかかったとき。
「もー、笑満ー!」
「あはは、馬鹿じゃないのw」
「春乃までやめてよー!」
やべっ、だれかきたっ。
打楽器の一年生が近くまできている。
「佑都隠れて。」
「ちょっと、むー!?」
むーが俺をお姫様だっこして路地裏へ連れてく。
「やめてよ、むー!!」
「いいから。」
よくないよくない!
男としてのプライドがずたぼろだよ。
しばらく進むと、隣の人通りが全くない旧蘭舞商店街通りに出た。
「おろせよー!」
「はいはい。」
「もう俺一生お婿にいけない。」
「女子か。」
「もうだめだ。恥ずかしかった。」
「じゃ、俺の嫁に来いよ。」
「黙れええええ。」
頭がいいむーはいつも一枚上。
「恥ずかしかったのはお姫様だっこだけ?」
むーがにやにやしながら訪ねてきて、やっと思い出した。
「さっきの佑都の真剣な顔、よかったよ。」
あぁくそいけめん。
「黙れ黙れぇ!あれは違うんだからな!」
「じゃ、何しようとしてたの?」
「こ、交信っ、!?」
「俺ら何人だよw」
むーが盛大に吹き出す。
むーがこんなにわらうの初めて見た。
「俺、むーがこんなに笑うの初めて見た。」
「そうか?サックスパートではいつもこんなかんじだけど。」
むーのやっている楽器、バスクラはいつもサックスパートとともに活動している。
俺のいないところでそんな笑うのかな。
「りりーとかひかるの絡みに後輩や名雪の突っ込みが入んのがすっげぇ、面白くってさ。」
「・・・。」
「・・・佑都?」
「・・・俺、俺が世界で一番っ、むーの事、す、す、スキ、だ、からね!」
むーからなにかプツッと切れる音がして、むーから強引にも唇が重ねられた。
世界で一番幸せな二人の時間。


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