恋する吹奏楽部
-部長、夏目彩視点-
みんな無言だった。
誰も席に座ったまま動かない。
結果は銀賞。
誰も動けない。
「…つめ!夏目!!」
「は、はい!」
岡重先生に呼ばれやっと体を動かすことができた。
「部長インタビュー出番もうすぐだから早く行け。」
「でも、みんなはっ、」
「はやく!」
「…はい!」
岡重先生は優しい。
私がみんなの前では泣けないこと、知ってるから。
出番あと10分後なのに、私に時間をくれた。
泣きたくないのに、涙が出てくる。
はやく会場から離れたくてなぜか走ってしまう。
すると
「夏目さん!」
「オ、オクテット!?」
勇舞のオクテットのみんなが私に駆け寄ってくる。
「だめ、来ちゃだめだよ、」
「夏目さん…」
「結果が全てじゃないよ。」
「彩ちゃん…」
涙はおさまらない。
逆にどんどん増していくばかり。
でもオクテットのみんなが励ましてくれるからいつまでも泣いているわけにはいかず、涙を拭いた。
「ごめんなさい、皆さんの分も頑張れなくて…」
謝る私にオクテットは優しく微笑む。
「夏目さん、君たちは十分頑張ったよ。ここの舞台に立てているってことは僕らよりは頑張った証だしね。誇りを持って。」
「風間くん…」
「お疲れ、部長さん。」
椎名くんが私の頭をそっと撫でてくれる。
私たち三年生は引退する。