アイノカタチ
action3
暗い闇。
怖い。
『はるか』
『…!?』
聞き覚えのある声。
この声は…………。
「碧(あおい)?
碧なの?戻って来たの?
お願い!居るなら返事して!お願いよ!」
叫びながら、闇の中を走り回る。
走って走って。
それでも何もない、ただの暗い闇。
見つからない。
同じだ。
あの時と。
私はまた、失うの?
私は、膝を抱えて泣き崩れる。
守れなかった。
大切な人。
大切な夢。
だから、私は。
「…………い、…………きろ」
……………誰?
「…………か、……………きろ」
少し、聞き覚えのある声。
でも、目を開けたくない。
「おいっ!いい加減起きろ!」
「……………!」
一段と高くなった声に驚き、勢いよく目を開ける。
浅い息を吐きながら、一体何が起きたのか分からず唖然とする。
私は、闇の中にいたんじゃないの?
視界に入ったのは、眩いばかりの明かり。
そして、目の前にいる人物を凝視する。
「大丈夫か?
凄い唸されてたぞ?」
「………………しゃ、ちょう?」
私は、何がなんだかわからない。
「とにかく、今水持ってくるから。そのまま待ってろ」
そう言うと、目の前にいた人…………社長は私の側から離れて行った。
それでも、私の頭は未だに機能しない。
久しぶりに見た夢。一番見たくなかった夢。
ううん、夢ではない。
実際に起きた、私の心ん中の闇。
親友だった碧が、突然私の前から消え居なくなった時の。闇。
大学を卒業する間近の頃だった。
ある日の夜。
碧からの電話がかかって来た。
『………遥? 』
『……碧?どうしたの?』
『………………』
私の名前を呼んだだけで、何も言わない。
再度どうしたの?と聞く前に、電話は向こうから切れた。
嫌な予感がした私は、急いで碧のアパートに向かった。
でも、部屋は、もぬけの殻。
何も残されてなかった。
ある写真だけを除いては。
碧が、東京の最後の実習先で出会ったといっていた男性と共に映っている写真。
彼との思い出は一枚でも残せない、と言って大切にしていたはずの写真を、碧は残して行った。
私は、碧の実家に連絡を入れたけど、娘はいつもこんなんだから大丈夫でしょ、と、真剣に扱ってもらえなかった。
無事でいるのか、どうなのか、安否が分からずに丸5年。
あの子がずっと夢だと言っていた介護士の資格を取り直しながら、あの子が居そうな施設を転々と探してあるいたが、見つからず。
最後の手がかりになる写真の施設を探して東京へ来た私。
似たような場所を受けてはいないとわかると業と落ちるように仕掛けて、数社を受けてきた。
この、最後の手がかりとなる人物だけでも探せたらいいのに。
現実は上手くいかない。
どうしたら、いいのだろう。




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