アイノカタチ
そもそも、私が何故こんな仕事をする事になったのか。
それは、カクカク云々。4日前のこと。
都会に出てきて、既に3ヶ月。
面接も数十回と受けて来たが、やはり都会はなかなか決まらない。
親からも、諦めて実家に帰って来いなんて連絡を受けるようになり、焦り始めていた時だった。
たまたま通った高級そうなレストランの入り口前。
かなりの人だかりが出来ていた。
なんだ?と、人ごみの中をくぐり抜け、前に出て見ると、何やら30代半ばの男性が。
肘を抑えてうずくまって座っていた。
その前には、難しい顔をした二人の男性。
どちらも40前半くらい。
2人のうち1人は、携帯を片手に何かを怒鳴りあっている。もう一人はわたわたと肘を抑えてうずくまって座っている男性に声をかけていた。
って。見るからに。あれは何らかの衝撃で腕を負傷したに違いない。
私は、ただ慌てるだけの様子の二人に呆れつつ、ゆっくりとその人の元へ。
「…あの、どうされました?」
「っ?」
私に声をかけられた男性は、顔を歪ませながら、私をゆっくりと見上げた。
隣にいた男性は、「なんだね君は!」とヒステリックに騒ぎ始める。
いい加減うざいよね。この人。
若干ぴきって来た私は、にっこり。
「あなた、少し黙らっしゃい。
いい大人が、無駄に騒いで野次馬集める役に徹しないでもらえます?
そちらの貴方も、何処に掛けて焦ってるのかわかりませんが、いったん落ち着いて電話を離しなさい」
少し強めで、なるべく低い声を出して注意する。
言われた2人はぴきりと固まりおとなしくなる。
「一体どうしたんです?」
私は、肘を抑えた男性に問いかける。
「いや、少々足を踏み外しまして。階段から転落し、肘を強打したようで、力が入らず激痛が」
「まぁ、ちょっと宜しいですか?」
私は、男性の腕に軽く触れる。
「ぐっ!」
「社長!」
もんぜつする男性。
「確実に入ってますねぇ」
「は、ぁ?」
私の言葉にわかってない男性。
「折れてはいないみたいですが、ヒビは確実かと」
「はは、私もそう思います」
男性は冷静に返していたが脂汗ぎっしり。
相当痛いのを我慢しているな。
仕方がない。
私は、後ろにあるレストランに急いではいり、中のウエイトレスに事情を説明してタクシーを手配してもらう。と、同時にいらなくなった少し集めの本も拝借し、男性の元へ。
「今からタクシーが来ます。それでかかりつけの病院へ向かって下さい。救急車呼ぶまでもないでしょうから」
「なっ、何たる失礼!救急車なら今私が呼ぼうとして!」
先程携帯で怒鳴っていたおじさんが顔を真っ赤にしながら私に言う。
ああ、救急車呼ぼうとしてたんだ。
「でも、救急車にしては分からず屋っ!とかなんとか言ってましたよね?」
「分野が違うから場所を言えばあっちから要請してやるだの抜かしやがるからだっ!」
それって。
「……失礼ですが、発信履歴確認した方がいいですよ。
完璧間違って連絡してますから」
「そんなわけないっ!」
私の言葉に憤慨したおじさんが、乱暴に携帯を確認する。と。
「………取引先の単身番号だ」
お気の毒さま。
私は苦笑しながら、持って来た本を男性の腕に巻き付ける。そしてカバンの中に入っていたパンストをぐるぐる巻き付け固定し、更にもう一枚のパンストを広げて肩に固定する。
「骨折してないので副木は必要ないかもしれませんが、動かして広げないよう予防と言う事で、体に固定しました。
この状態で、恥ずかしいかもしれませんが、病院へ行き処置をしてもらって下さい」
「…………ありがとう。すまないね?」
男性は、苦笑しながら私にお礼を言う。
それでは、と、その場を離れるつもりで、体を起こした時だ。
ぱしっ、と腕を掴まれたのは。
私は、え?と首を傾げる。
男性は、更に申し訳なさそうに顔を歪めた。
「済まないが、一緒に乗ってくれないだろうか?」
「…………はい?」
なぜ?と私は更に首を傾げる。
「彼らより君の方が頼りになる」
ずばっと言っちゃったよこの人。
それは、カクカク云々。4日前のこと。
都会に出てきて、既に3ヶ月。
面接も数十回と受けて来たが、やはり都会はなかなか決まらない。
親からも、諦めて実家に帰って来いなんて連絡を受けるようになり、焦り始めていた時だった。
たまたま通った高級そうなレストランの入り口前。
かなりの人だかりが出来ていた。
なんだ?と、人ごみの中をくぐり抜け、前に出て見ると、何やら30代半ばの男性が。
肘を抑えてうずくまって座っていた。
その前には、難しい顔をした二人の男性。
どちらも40前半くらい。
2人のうち1人は、携帯を片手に何かを怒鳴りあっている。もう一人はわたわたと肘を抑えてうずくまって座っている男性に声をかけていた。
って。見るからに。あれは何らかの衝撃で腕を負傷したに違いない。
私は、ただ慌てるだけの様子の二人に呆れつつ、ゆっくりとその人の元へ。
「…あの、どうされました?」
「っ?」
私に声をかけられた男性は、顔を歪ませながら、私をゆっくりと見上げた。
隣にいた男性は、「なんだね君は!」とヒステリックに騒ぎ始める。
いい加減うざいよね。この人。
若干ぴきって来た私は、にっこり。
「あなた、少し黙らっしゃい。
いい大人が、無駄に騒いで野次馬集める役に徹しないでもらえます?
そちらの貴方も、何処に掛けて焦ってるのかわかりませんが、いったん落ち着いて電話を離しなさい」
少し強めで、なるべく低い声を出して注意する。
言われた2人はぴきりと固まりおとなしくなる。
「一体どうしたんです?」
私は、肘を抑えた男性に問いかける。
「いや、少々足を踏み外しまして。階段から転落し、肘を強打したようで、力が入らず激痛が」
「まぁ、ちょっと宜しいですか?」
私は、男性の腕に軽く触れる。
「ぐっ!」
「社長!」
もんぜつする男性。
「確実に入ってますねぇ」
「は、ぁ?」
私の言葉にわかってない男性。
「折れてはいないみたいですが、ヒビは確実かと」
「はは、私もそう思います」
男性は冷静に返していたが脂汗ぎっしり。
相当痛いのを我慢しているな。
仕方がない。
私は、後ろにあるレストランに急いではいり、中のウエイトレスに事情を説明してタクシーを手配してもらう。と、同時にいらなくなった少し集めの本も拝借し、男性の元へ。
「今からタクシーが来ます。それでかかりつけの病院へ向かって下さい。救急車呼ぶまでもないでしょうから」
「なっ、何たる失礼!救急車なら今私が呼ぼうとして!」
先程携帯で怒鳴っていたおじさんが顔を真っ赤にしながら私に言う。
ああ、救急車呼ぼうとしてたんだ。
「でも、救急車にしては分からず屋っ!とかなんとか言ってましたよね?」
「分野が違うから場所を言えばあっちから要請してやるだの抜かしやがるからだっ!」
それって。
「……失礼ですが、発信履歴確認した方がいいですよ。
完璧間違って連絡してますから」
「そんなわけないっ!」
私の言葉に憤慨したおじさんが、乱暴に携帯を確認する。と。
「………取引先の単身番号だ」
お気の毒さま。
私は苦笑しながら、持って来た本を男性の腕に巻き付ける。そしてカバンの中に入っていたパンストをぐるぐる巻き付け固定し、更にもう一枚のパンストを広げて肩に固定する。
「骨折してないので副木は必要ないかもしれませんが、動かして広げないよう予防と言う事で、体に固定しました。
この状態で、恥ずかしいかもしれませんが、病院へ行き処置をしてもらって下さい」
「…………ありがとう。すまないね?」
男性は、苦笑しながら私にお礼を言う。
それでは、と、その場を離れるつもりで、体を起こした時だ。
ぱしっ、と腕を掴まれたのは。
私は、え?と首を傾げる。
男性は、更に申し訳なさそうに顔を歪めた。
「済まないが、一緒に乗ってくれないだろうか?」
「…………はい?」
なぜ?と私は更に首を傾げる。
「彼らより君の方が頼りになる」
ずばっと言っちゃったよこの人。