君がすき
『あっ、めずらしく叶芽がいる!おーい、叶芽ーっ』
『ちょ、オイ、夢榎!』
『んー……なに……夢榎ー……?』
前を歩く早瀬に気づいた瞬間、軽く手を振りながら、夢榎がアイツに向かって声をかける。
おいおい、なにやってくれてんだよ…!?
そんな俺の制止も効かぬまま、ゆっくりと振り返る早瀬。
その目はトロンとして、いかにも“眠いです”と言っているようなもの。
あ、ちょっと可愛いかも……。
って、そうじゃなくて!!
『おはよー』なんて言いながら早瀬に駆け寄る夢榎の後に、俺も渋々着いていく。
『んー…おはよ、夢榎……と、久富……』
あ、俺は付け足しか。まぁ、いいけど…。
目をこすりながら、盛大にあくびをかましているところを見るあたり、まだ機嫌はマシみたいだ。
あとは俺が、いつものようにいらないことを口にしなければいいだけ。