君がすき
『先輩、眠そうっすね!昨日言ってたキャラメル、家にあったんであげます!』
『キャラメル!?ちょうだいっ!ありがとーっ!!』
ヒナタくんとやらは元気よくそう言うと、“はい”とキャラメルを早瀬に渡す。
その瞬間、さっきまでうつろだった早瀬の目が一気にパッと輝きだした。
『じゃ、俺行きますね!また放課後に!』
ヒナタくんはニカッと明るく笑うと、傍にいた俺と夢榎にも『先輩方にもあげますね!』と言いながら、キャラメルを渡す。
そして、まるでそれが習慣であるかのように、早瀬の頭をポンッとなでると、颯爽と走り去っていった。
『すごい爽やかな後輩くんねぇ…』
『でしょー?ヒナタくん、面白くて優しくて、たまにお菓子もくれるから好きなんだーっ』
感心したように笑いながら、ポソッと呟いた夢榎に、嬉しそうにキャラメルを頬ばりながら話す早瀬。
“好きなんだーっ”
恋愛感情なんかない。
そう分かってはいても、その言葉はズシリと重く、俺は思わず口を開いていた。
『お菓子でつられるなんて、さすがはチビ子だな』
『……あ?』
低い声と、鋭い目つきに気づいたときには、もう手遅れ。
呆れ返った夢榎の顔が、はっきりと視界に映った―――。