君がすき
「―――叶芽!!」
ゆっくりと、口を開きかけた久富に重なるようにして、あたしの名前が教室に響く。
それに思わずビクッと反応すれば、ドアのすぐ近くで、夢榎があたし達を見ていた。
「……夢榎?」
「バド部の後輩が探してたよ。泉輝も、早く行かないと顧問に怒られるよ?」
「え?……って、あっ、もうこんな時間なってたの!?」
思いのほか時間が経過していたことに、慌ててカバンとラケットを持つ。
「ごめん、久富!さすがに時間ヤバイから先行く!また明日聞くから!夢榎もありがと!」
「お、おう…じゃーな」
驚いた表情の久富と夢榎に手を振ると、廊下を駆け抜ける。
先生に怒られちゃうかなぁ?
久富の話も中断しちゃったし……。